我が国の国民医療費が43 兆6,000 億円(令和元年度)となり、増加の一途をたどっている。医療業界から保険診療制度の限界が叫ばれる中、医療機関ではサプリメントや栄養点滴などの自由診療が見直されている。特に、コロナ禍にあっては免疫力を高めるため、予防医学の重要性がかつてないほど高まっている。全国民対象の公的医療保険制度がない米国では、サプリメントを健康維持に役立てている。一方、日本ではサプリメントを、病気の予防に役立てている人は多くはなかった。しかし、近年はサプリメントの供給元がエビデンスの明確化を強化し、そのようなサプリが医療機関で採用されるようになっている。医師が認めるサプリの種類が増えれば、一般のサプリ市場も波及される。EBS(エビデンス・ベースド・サプリメント)の販売メーカーは各検査機関・医療機関と連携しセルフメディケーションに舵を切った。
医療機関のサプリ採用増加傾向一般市場にも波及するか
TPCマーケティングリサーチの市場調査によると2019年の医科向けサプリメントの市場規模は196億円となり前年度比3,2%増となった。2020年は200億円となる見通しとなる。
要因として「アイケア」や「女性サポート」を訴求した製品の売り上げが牽引していることが挙げられるが、それに加えてビタミンや整腸系のサプリも各医療機関で伸びているという。免疫や腸内環境を改善する動きが見られ「病気になったら治す」から「病気になる前に予防する」と人々の意識が変わってきた。
医療機関での販売方法も多様化しつつある。待合室を有効に活用するために、待合室に売り場を設け、話題のサプリや
健康食品を販売する例が増えてきている。さらに、クリニックがオンラインサイトを立ち上げ、各メーカーと協力して患者に直送する例などもある。
日本オーソモレキュラー医学会の柳澤会長によると、「保険に頼らない医師は海外の論文を研究し自ら新しいサプリ療法等を取り入れている」と話す。アメリカでは、効果効能を謳える医薬品・サプリの開発が進んでいることを例に、「日本では法制度の問題で製薬メーカーの開発が遅れてしまうのでは」と危惧する。
一方でオーソモレキュラー医学会では、新たにサプリや健康食品の推奨マークの事業をスタートした。同医学会の医師達が、対象製品をエビデンス、トレーサビリティなどを精査し、一定の基準に満たした製品のみ「オーソモレキュラー医学会推奨マーク」を付与する。
医療機関向けだけではく、市販向けのサプリや健康食品も対象としている。医療機関向けにサプリを販売しているメーカーに取材をしたところ、2020年度の売り上げは昨対比を超えたという声が多かった。
コロナ以降、医師が集まる学会がオンラインに切り替わり、出展社数を制限するなど全体的には製品発表の機会が減少傾向にある。それでも、医療機関向けサプリが伸びていることは、医師や薬剤師からの注目が高まっていると言える。
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