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認知機能「切り出し表示」で改善指導 「対象者・機能性の範囲明示を」(夏季特別号インタビュー/田中誠室長)

消費者庁は3月31日、認知機能対応の機能性表示食品のインターネット広告で115事業者に改善指導を行ったと発表した。届出表示の一部を切り出して強調する表示などが問題視され、健康食品業界に動揺が広がった。なぜ認知機能だったのか? デザインが重要な商品パッケージ表面に機能性表示の全文を書かなければいけないのか? 販売後のパッケージ変更は負担が大きく、企業からは「安心して販売できる仕組み」を求める声が挙がる。今回の経緯等について、ヘルスケア表示指導室長・田中誠氏に話を聞いた。

□ 届出表示の逸脱に注意

── 今回の経緯について
認知機能に限らず、機能性表示食品については、エビデンスと広告に関して、事後チェック指針に基づき継続的にチェックしている。個別の指導事例については公表していないが、認知機能に限らず、他の分野でも数十件ほど指導を行っている。

今回、特定の分野でここまで緊急監視をやったのは初めてになる。「物忘れが改善する」というのは医薬品の効果効能の分野で、機能性の範囲を逸脱している。

認知機能の中でも記憶力、その記憶力のなかでも空間認識力・判断力に限定されているのに、あたかも認知機能全体に効果があるかのように表示しているのが多数見受けられたのが発端だ。

なぜ一斉監視に踏み切ったかというと、医薬品の効果効能に踏み込んで、改善できるということを期待させてしまうと、疾病を抱えている方々が適切な治療を逃してしまうおそれがある。

認知症や物忘れを改善するかのような広告宣伝を行っていたのは3事業者・3商品あった。機能性表示食品の範囲を逸脱した広告は、112事業者128商品。これをなぜ公表したかというと、いずれも指導にとどまるものだが、緊急性も踏まえ、迅速に修正をお願いした。

プラットフォーム側にも注意喚起をして、協力をお願いした。あわせて消費者に情報提供を行った。3事業者の物忘れ改善表示については、中にはアミロイドβを除去するかのような表示があった。薬でもあるかないかの議論をしているくらいなのに、そのあたりはしっかりと指導した。

112事業者の方は、中高年を対象にしたエビデンスなのに、受験生など誰にでも効果があるかのような表示があった。BMI25〜35の人とか、対象者は明確にしておく必要がある。

対象者の範囲が限定されている場合、その対象者を明示しないことによって、誰にでも効果があると思わせることがいけない。これが切り出しにおける注意点になる。後は、届け出表示を逸脱する例。「維持」であるにも関わらず、「改善」と書くケースだ。

広告を作る方が、エビデンスを理解しないまま作ってしまう例もある。表示を作る人も、エビデンスの範囲を理解してやってもらわないと逸脱してしまう。

あと、グラフなど実験結果の引用。本来「維持」なのに、グラフの線が上がっていると改善しているように見える。グラフを使う分には問題ないが、最終的な表記や与える印象については注意してほしい。

□「広告の世界は自由だが誤認与えないように」 パッケージも適切な対応必要

「脳の血流を改善する」という作用機序だけ抜き出して強調するのも指導の対象としている。

切り出し表示で何に気を付けたらいいのかというと、対象範囲の明示、機能性の範囲の明示、SRとRCTの区別。「減らす」と「減らすのを助ける」のでは、作用機序が違うので、ここは省略してはいけない。

場合によっては、「減らす」と言い切ってしまうことで薬機法に抵触することもある。「役立つ」「サポート」は省略をしない。この辺りが注意する点だ。

広告の世界は自由で、事業者の方々の創意工夫でやって頂きたい。一方で、消費者に誤認を与えるのは困るので…

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