乳酸菌ブームで殺菌体に脚光
腸内フローラ”が脚光を浴びたことで一気に関心が高まった乳酸菌。まさに乳酸菌ブームともいえる過熱ぶりで、乳酸菌マーケットにはますますの追い風に。ブームの火付けは、生きたビフィズス菌や乳酸菌を配合した機能性ヨーグルトの販売拡大によるところが大きいが、さらに市場を押し上げたのが殺菌乳酸菌(死菌)の登場だ。殺菌乳酸菌自体は以前よりサプリメントを中心に配合されてきた実績を誇るが、近年、菓子類やカップ麺をはじめとした一般食品への配合に加え、外食チェーンのメニューにも採用されるなど、用途が格段に広がっている。安定した品質と加工のしやすさが殺菌乳酸菌の特徴だが、殺菌乳酸菌が持つ機能性や、蓄積されたエビデンスも広く知られるようなった。特に、殺菌乳酸菌の特長ともいえる免疫賦活作用への注目が集まっており、抗アレルギー、抗疲労、抗インフルエンザ作用などを想定した商品開発が進んでいる。
サプライヤーの情報発信が奏功
各社とも供給量増大
殺菌乳酸菌はその名の通り、乳酸菌を加熱殺菌処理して加工したもの。一昔前までは、“生きて腸まで”というキャッチコピーが先行し、「乳酸菌は生きていなくてはいけない」との認識が根強くあったが、殺菌乳酸菌に機能性が全くないわけではない。実は殺菌乳酸菌(死菌体)の有用性については100年以上前から論じられている。
乳酸菌そのものの健康効果を明らかにしたのが、ロシアの微生物学者メチニコフ。人間の老化は腸内の有害菌によって起きる腐敗産物の発生が原因とし、ヨーグルトを食べて有害菌を減らすことが長寿の秘訣であると提唱した。これが有名な「ヨーグルトの不老長寿説」で、1907年に刊行した「長寿の健康」のなかでヨーグルトに含まれる乳酸菌に腸内の腐敗菌の増殖を抑える働きがあると言及している。この提唱により乳酸菌の研究が盛んになっていくが、研究は殺菌乳酸菌にも及んでおり、マウスに加熱殺菌した乳酸菌を添加した餌を食べさせたところ 8 %寿命が延びたとの文献も。当時より殺菌乳酸菌の有用性については触れられていたものの、現代の乳酸菌マーケットでは、プロバイオティクスの説明が定着したことで、前述の「生きていなくてはいけない」との認識が広がったと推察される。
話を現在に戻すと、腸内フローラ改善をテーマに、生きた乳酸菌やビフィズス菌が配合されたヨーグルトの売上は爆発的に伸び、しかし一方で、死んだ菌を配合したサプリメントや飲料、お菓子、惣菜などの一般食品に採用された商品も大きな広がりをみせている。その要因には、殺菌体特有のハンドリングの良さもさることながら、豊富なエビデンスが広く知れ渡ったことが挙げられる。国内ではコンビ、日本ベルム、ブロマ研究所など、老舗メーカーがエンテロコッカス・フェカリス菌の機能性研究に取り組み、情報発信を続け、着々と営業を進めたことで殺菌乳酸菌市場の土台ができあがったといえる。また、I H M や亀田製菓など、植・・・
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