公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では、3月に「飲食提供の基本戦略」を発表。1,000万人超の巨大市場創出を前に、農作物、飲料、加工食品、サプリメントなど食品業界からの問合せが多数寄せられている。
大会組織委員会(以下、東京2020)は3月、「東京2020大会における飲食提供に係る基本戦略」を発表。栄養管理については、スポーツ栄養等に基づくメニュー構成や、多様な食習慣への配慮、栄養ヘルプデスクの設置などを挙げる。
取り組み項目には、食材を通じた意図しないドーピングの防止、選手が必要な時に栄養補給できる体制の確保などが含まれる。メニュー採用に関しては、将来に繋げる取り組みとして、地域特産物や、新しい技術および優れた品質等の発信等で、日本の食文化の発信も盛り込んでいる。東京2020では昨年、日本オリンピック委員会と味の素の協力のもと、大学連携イベント「学生が考えるアスリート飯」を開催。全国各地の特産品を食材や料理に一部活用することで全国的な参加を促進。国産食材ではJGAP Advance、GLOBALG.A.Pの認証など持続可能性に配慮した農産物を「可能な限り優先的に調達する」としている。
東京2020では、調達コードとして、農産物や畜産物、水産物などを順次公開。サプリメントメーカーや健康食品関連からの問い合わせも多く、東京2020戦略広報課によると、「ライセンシングについての申請はかなり来ているが、さまざまな話題のプロダクトが進行しているため、商品カテゴリーとしての公表はまだで、契約数なども公表していない」という。関連する受発注については、公益財団法人東京都中小企業振興公社内に設置した中小企業世界発信プロジェクト推進協議会事務局の運営する「ビジネスチャンス・ナビ2020」WEBサイトで、新規利用の申請手続きが可能。
アンチドーピングに関しては、スポーツニュートリションカテゴリーのサプリメントに商機がある。意図しないドーピング対策の観点からも認証取得の機運が高まっており、アンチドーピング認証プログラム「インフォームドチョイス」の認証を管理する英国LGC社では、「選手の安全・安心の確保のためにグローバルスタンダードの認証が必要」と説明。国内でもサプリメントメーカー18社(原材料認証2 社を含む)が認証取得し、アスリートや各競技団体への提案に力を入れている。英国LGC社の日本総代理店であるバイオヘルスリサーチリミテッドは、「東京五輪の飲食提供に注目が集まる中、認証取得メーカーにもビジネスチャンスが広がれば」と期待を込める。
東京オリンピック・パラリンピックの飲食提供は、選手村や競技会場、練習会場、ホスピタリティセンターなどを含め、訪日外国人への飲食提供の場が創出される。東京2020では、選手及びチーム役員等2万6,200人(オリンピックとパラリンピックの合計数、以下同)、国際競技連盟4,100人、放送サービス2万7,500人、プレス7,800人、マーケティングパートナー1 万7,100人を想定。さらに観客は1,000万人超を見込む。巨大市場に向け、期待が高まりそうだ。
本記事は「健康産業新聞 1650号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約48頁)定期購読のお申し込みはこちら
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