動き出したHACCPの制度化に続いて、健康食品を含めた食品の「営業許可制度」「営業届出制度」に関する議論が厚生労働省で始まった。6月に公布された改正食品衛生法を受けた措置。各種製造業等について、「要許可」か「要届出」かの検討を急ピッチで進め、年内に意見募集を行い、来年1~2月に政省令等の素案を取りまとめる。
厚労省は1日、「食品の営業規制に関する検討会」(座長:東京農業大学応用生物科学部農芸化学科教授、五十君靜信氏)の初会合を開催。現行34業種を定める「営業許可制度」を見直すとともに、新たに創設する「営業届出制度」に関する検討に着手した。6月の食衛法改正から3年以内に施行されるが、自治体の条例改正に絡むほか、電子申請システムを構築する必要もあり、「意外と時間がない」(厚労省)。年内にも素案の概要を示し、年度内に取りまとめを行うというスケジュールで一気に詳細を詰める。
現行制度は、「要許可業種」とそれ以外という位置づけで、一部自治体が届出制度を設けているが、改正後は(1)要許可業種、(2)要届出業種、(3)届出対象外――の3つに整理される。食中毒リスクなど、公衆衛生への影響を鑑みて分類する。
要届出業種の新設は、許可業種以外の事業者を国が把握する狙いがある。原則として、③以外の全事業者は、「許可」または「届出」が必要な仕組みになる。
初会合では厚労省の説明と、北海道・東京都・福岡県の営業規制の現状報告が行われた。北海道保健福祉部健康安全局食品衛生課長の河村成彦氏は、「北海道では条例でかなりの事業者を把握できている」ことを紹介。
東京都福祉保健局健康安全部食品監視課長の中村重信氏は、都では許可業種の「粉末食品製造業」で、ふりかけなどの粉末食品のほか、顆粒・錠剤・カプセルなど「健康食品関係も規定している」ことを説明した。
福岡県保健医療介護部食の安全総合調整監兼生活衛生課長の田則子氏は、「漬物製造業」で報告制度を設けていることを紹介。約3,000施設の報告があるという。ただ創設時に報告を受理したが、その後の廃止・変更届け出がほとんどなく、営業実態との整合を維持することが困難であることを指摘、今後「届出制度」を活用する場合、同じような問題が起こる可能性があることに懸念を示した。
厚労省の「食品衛生法改正懇談会」が昨年11月にまとめた報告書では、「行政がいわゆる『健康食品』の製造事業者を把握する仕組みも設ける必要がある」ことを明記。食衛法改正にあたり実施したパブコメに対する回答で厚労省は、「健康食品の販売・製造事業者についての取り扱いを検討する」こととしている。
健康食品の製造業については、「法的定義がないことも踏まえて、これから検討していく」(食品監視安全課)としている。限られた検討時間の中で「要許可」になるのか「要届出」になるのか、議論の行方が注目される。
本記事は「健康産業新聞 1650号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約48頁)定期購読のお申し込みはこちら
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