ユニアス国際特許事務所では、特許、商標、意匠を複合的に活用し、各知財権利の特徴を活かした“知財権ミックス知財戦略”の必要性を重視しているという。同社パートナー弁理士である石川氏、春名氏に話を聞いた。
―― 知財権ミックス戦略とは?
春名氏:特許による「革新的イメージ付加効果」と商標による「ブランドイメージ醸成効果」、意匠による「新デザインの視覚効果」をミックスし、製品を多面的に保護していく知財戦略のことです。
特許取得により製品パッケージやHPで新しい技術ブランドをアピールできます。ただし特許は出願日から20年で満了となるため、商標のように半永続的な保護を受けられません。
例えば、技術コンセプトを長期保護しブランドを育てつつ、技術の革新的イメージを付加するためには、商標と特許を複合的に活用することが効果的です。基本特許が満了となる前に、技術コンセプトを共通にした改良特許を新たに取得することで、商標で長年保護された技術ブランドに、更なる革新的イメージを付加し、商標と特許の両側面による効果を得ることができます。
―― メーカーが新商品を上市する際、優先するべきことは?
石川氏:ターゲットを絞り、狭い市場でも良いのでナンバー1のシェアを目指すことだと思います。ナンバー1商品の認知度は2位以下の商品に比べて高く、例えば「日本で売れているスマートフォンはなに? 」と問われて「アイフォン」と殆どの方が答えられますが、2番目が「エクスペディア」だと知っている人は少ない。最初からターゲットを広げるのではなく、まずは特定のターゲットに向けて、訴求点を絞った商品を投入しシェアを獲得し、その後ターゲットを広げることが重要です。飲料分野への新規参入の成功した例として、花王の『ヘルシア』が挙げられます。同品は、中高年の社会人(ビジネスマン)に向けて、高濃度茶カテキンを含む緑茶というシンプルで明確な提案でシェアを獲得しました。「お茶、中高年、痩せる=ヘルシア」となった段階で紅茶やコーヒー、炭酸飲料などすそ野を広げ、さらにシェアを伸ばしています。
―― 商品のネーミングの際、考えるべきことは?
石川氏:先行して出願や登録されている商標を調査し、早期に出願することが重要です。他社の商標権を無断使用していれば、損害賠償、販売差止に繋がります。近年では大手ファストフードチェーンが期間限定ポテトフライのネーミングに他社の登録商標である「黒七味」を使用し、販売中止、自社HPへ謝罪広告を掲載した例や、エイベックス社の「PPAP」事件のように、自社と関係のない第三者が勝手に商標出願したことで、知らぬ間にトラブルに巻き込まれる危険があります。このような事態を防ぐには、先行調査を行い、早期出願を心掛けることが重要です。
そして調査をする際は、自己流の判断はせず、特許庁の提供するJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)、インターネット検索サイトなどを活用し、同種商品の他社動向のチェックをしましょう。
―― 販売側が考えるべきことは?
石川氏:小売業、卸売業者にとっても仕入先の製品が商標権や特許権を侵害していないか製造元に注意喚起することは必要です。メーカー側に登録番号、出願状況について開示してもらい、自社商品が他社の知財権を侵害していないかを意識しましょう。販売も商標や特許の使用及び実施行為の1つであり「知りませんでした」では済まされません。特にインターネット通販や越境ECのような業態の場合は注意が必要です。
本記事は「健康産業新聞 1650号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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