「粉ミルク」といえば、“赤ちゃんが飲むもの”という認識が一般的だが、今、シニア層をターゲットにした“大人向け粉ミルク”が売れている。現在、救心製薬、森永乳業、雪印ビーンスタークなどが製品を展開。マーケティングが難しいと言われるシニア市場で、大人向け粉ミルクはなぜ受け入れられたのか。好調の要因と今後を探った。
先月1日、雪印ビーンスタークがスティックタイプの『プラチナミルクfor バランススティック10本』を来月発売すると発表。4月には森永乳業から栄養成分を強化したシリーズ新製品『ミルク生活プラス』が発売されるなど、好調を受け上市が続く。大人向け粉ミルクのターゲットは50~70代のアクティブシニア。成長に必要な栄養の全てを摂取できる乳児用粉ミルクとは異なり食事で不足するビタミンなどの栄養素を補う目的で作られており、“高タンパク・低脂肪“が基本仕様となっている。
主なメーカーは救心製薬、森永乳業、雪印ビーンスターク。3社とも開発のきっかけは、「健康のために赤ちゃん用粉ミルクを飲んでいるが大人が飲んでもいい?」「骨粗しょう症予防で牛乳を飲むが、お腹がゴロゴロしてしまう」といった高齢者からの声。実は森永乳業では、以前からこの類の問い合わせが年間100件程あったという。こうした声を受け2014年4月、最初に上市されたのが救心製薬の『大人の粉ミルク』だ。牛乳の約2倍のタンパク質とカルシウムが摂取できる栄養機能食品(カルシウム)。ネーミングは「高齢者という表示は避けたかった為、当時流行していた“大人の~”というフレーズを採用した」といい、これが功を奏した。粉ミルクと大人という真逆のイメージの組み合わせからテレビやSNSで話題となり、幅広く製品を知らしめる結果となった。同社では「大々的なPRはしていないが売り上げは年々上昇。昨年度は計画比で4.7倍だった」としている。続いて、2016年に10月に森永乳業がラクトフェリンやシールド乳酸菌、“脳活”成分などを配合した『ミルク生活』を、2017年9月には雪印ビーンスタークが味にバリエーションを持たせた『プラチナミルク』シリーズを上市。いずれも当初の計画を大きく上回り、『ミルク生活』は生産が追い付かず一時注文受付を中止したほど(現在は順調)。『プラチナミルクfor バランス』は、後発ながら今年5月までの店頭売り上げシェアがトップになった。
数ある健康食品からシニア層が粉ミルクを選んだ理由に、「“赤ちゃんが飲むものだから安心”という背景がある」(森永乳業)という。50~70代は粉ミルクを育児に活用した世代。その経験が信頼と安心につながった。また、「“栄養を取る=牛乳(ミルク)を飲む”という行動になじみがあり生活に取り入れやすかった」(雪印ビーンスターク)とも分析。これまで良しとしてきた概念の延長にあるものがシニアには受け入れやすいという。政策として健康寿命延伸が提唱され高齢者の意識が変わったことも後押しになったと各社口を揃える。育児用ミルクで実績のある森永乳業、雪印ビーンスタークは「育児用ミルク市場で培った経験と技術、データを、拡大するシニア市場に生かせるメリットは大きい」と、さらなる市場拡大に意欲を見せる。
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本記事は「健康産業新聞 1651号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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