昨今、テレビや雑誌で頻繁にとりあげられ、注目を集める“腸内フローラ”。食品産業では、『腸活』や『菌活』をキーワードに、様々な商品開発が進む。そうした中、腸内環境改善が期待できる食材として大麦が脚光を浴びている。3月29日に放送された腸内フローラに関するテレビ特番では、大麦品種「もち麦」が腸内環境改善に良い食材として紹介されたことから、翌日にはスーパーからもち麦製品の売り切れが続出し、メーカー各社も対応に追われた。また、国内外では、従来の「食後血糖値上昇抑制」や「コレステロール低下」に加え、「腸内環境改善」機能に注目した研究が始まりつつある。
スーパーの棚からもち麦製品が消えた。
ことの発端は、3月29日に放送された“腸内フローラ”に関するテレビ特番で、腸内環境改善に良い食材として大麦品種の一つ、『もち麦』が紹介されたことによる。番組では、食物繊維研究の第一人者である大妻女子大学の青江誠一郎教授が、大麦に含まれる水溶性食物繊維β-グルカンの機能を解説。また同氏監修のもと、数名の女性を対象にもち麦ごはん摂取のモニター試験が行われ、2週間経過後の体重、腹囲の数値を測定した結果、個人差はあったものの、概ね、摂取前後で体重、腹囲の数値に改善がみられた。
トマトや納豆、バナナなど過去にテレビで健康効果が紹介された食材同様、もち麦も翌日には消費者がスーパーに殺到したことから売り切れ状態になった。もち麦を扱うメーカーに取材したところ、放送翌日から問い合わせが急増し、雑穀大手のはくばくでは、「放送から3日間の出荷量は従来の半年分で、予想以上の反響だった」とし、直後には、主力製品の『もち麦ごはん』シリーズや機能性表示食品『大麦効果』など関連商品の販売を休止したほど。5月10日には、数量限定ながら販売を再開したが、反響は続くとみている。この他、ベストアメニティでは「もち麦製品の生産をフル稼働している」や、もち麦を扱っていない西田精麦でも「もち麦から波及して他の大麦製品の問い合わせが増えている」などの声が聞かれ、全国規模で反響は大きかった模様だ。
今後の動向について各社からは「もち麦製品を購入し体感した消費者が、2週間後に再購入することが期待できる」との声も。売り切れ期間のチャンスロスを背景に、再出荷も始まっており、継続的に購入が進むとの見方が濃厚だ。2週間の摂取サイクルが定着すれば、大麦市場
拡大の機運も高まりそうだ。
大麦の機能性に関しては、水溶性食物繊維β-グルカンを関与成分とする「食後血糖値の上昇抑制」、「コレステロールの低下」、「腸内環境の改善」が国内外の研究で報告されている。昨年スタートした機能性表示食品では、大塚製薬やはくばく、永倉精麦、小倉屋柳本の大麦製品が受理されるなど、機能性の認知も進む。また、スウェーデン・ルンド大学のインゲル・ビヨルク氏らの最新研究では、大麦摂取で血糖値が改善した被験者に、食物繊維の分解酵素が強い腸内細菌叢の一つプレボテラ属菌が増加傾向にあることを確認。今後の大麦研究は、腸内フローラにスポットを当てた研究が進むと予想される。
本記事は「健康産業新聞 1596号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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