電解水素水整水器のトップメーカー メディカルカンパニーへの移行目指す
リーディングカンパニー・(株)日本トリム(大阪市北区)。水素水のネガティブ報道を受け、ここ2年間は厳しい業況を強いられたものの、2019年3月期(第1四半期)の売上高は、前年同期比16.9% 増の42億3,400万円、経常利益は同7.6%増の7億7,300万円と、見事にV字回復。販売戦略をBtoBへと大きく舵を切ったことが復活の一因といい、第1四半期の状況から見て十分に上振れも見込まれる。同社はまた、医療分野や基礎研究分野に加え、農業・海洋分野まで、国内外の複数の大学や研究機関と産学共同研究を実施。電解水素水の様々な可能性を追求している。近年は電解水透析など医療分野で国内に留まらず海外へも進出。グローバルな“メディカルカンパニー”への移行を目指す同社の森澤紳勝社長に、電解水素水の可能性や同社の今後の展開について話を聞いた。
―― 大きく業績を回復している要因は
森澤氏 主力アイテムである電解水素水整水器の販売戦略を従来のBtoC中心から、BtoBへと舵を切ったことが奏功している。なかでも昨今、「健康経営」を推進する企業が増加していることが追い風となっている。当社社員は電解水素水を毎日飲用することで、医療費が全国平均の6割強であることが実証されている。このデータを下に、企業の生産性低下の一因である従業員の「プレゼンティーズム」を低減し、収益の向上に繋げる一助として、会社で毎日飲む水を電解水素水に変えるよう提案している。その結果、既に健康経営銘柄に認定された企業をはじめ、多くの企業と契約し、整水器の企業設置が加速している。当社もまた2017年、2018年と「健康経営優良法人ホワイト500」に認定されたことで、取引先から高い信用を得られている。B to B市場への展開はまだ開始したばかりだが、非常に可能性の大きいマーケットだと考えており、今後さらに強化していく。
―― 水素の研究でもトップクラス
当社の電解水素水整水器は、厚生労働省所管の薬機法で認証を受け、「胃腸症状の改善」が認められた管理医療機器であり、安全性と有用性が確認されている製品であるが、加えて当社では約20年前から整水器の水に含まれる水素についても多角的に研究を実施してきた。医療分野では東北大学や高知大学、カロリンスカ研究所、基礎研究分野では理化学研究所、東京大学、立命館大学、高知工業高専などとの産学共同研究を通じて、電解水素水の可能性を追求している。今年1月には、東北大学との共同論文で、電解水透析により透析患者の死亡および脳血管病の発生リスクが、通常透析と比べ41%抑制されたことなどを英国科学雑誌『Scientific Reports』に発表した。
基礎研究では、東京大学および理化学研究所との共同で、電解水素水の物性解明や水の構造解析についての研究も行っており、今年度末には東京大学の研究結果がまとまる予定だ。他にも高知大学や高知県、JA南国市と共同で、電解水素水を活用した農業分野での共同研究、東海大学や高知工科大学とは電解水素水の海産物の鮮度保持に関する共同研究も行っている。これら研究の一端を今年5月、著書『「水」に価値がついた日』(ダイヤモンド社)として発刊した。
健康産業分野はいかがわしいとのレッテルを貼られることもあり、水ビジネスはなおさらだ。当社では“ウォーターヘルスケア”による予防医療、医療費削減への貢献を使命に企業活動を行っているが、健康・医療分野に留まらず、農業や海洋など様々な分野で水素の有用性を研究し、応用していくことで、少しでも水素水に対する偏見の払拭に繋がり、業界全体の底上げになればと考えている。
―― 今後のヴィジョンについて
森澤氏 グローバルなメディカルカンパニーへの移行を目指している。当社の電解水透析は、200以上の医療機関で導入についての折衝が進んでおり、既に国内では15施設に導入し透析患者のQOL向上に役立っている。今年5月には、中国・北京に電解水透析を用いた治療を中心に行う約200床の病院を開院した。海外における日本式病院として大きな期待を受け、開院式には日本の内閣官房や大使館からも出席者が集った。この他にもグループの新たな成長軸として、再生医療・細胞治療分野の事業基盤拡大に向けた取り組みにも着手している。こうしたメディカル分野での信頼を勝ち取った上で、電解水素水整水器の販売事業にもシナジー効果を高めていきたいと考えている。
本記事は「健康産業新聞 1652号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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