訪日中国人観光客の爆買い対象品の売行きが鈍化している。花王が2月4日に発表した2018年12月期決算では、インバウンド特需を生んだベビー用紙おむつ『メリーズ』シリーズの販売量が失速、ヒューマンヘルスケア事業は前年同期比4.8%となった。
内閣府の景気ウォッチャー調査“1月の家計動向”では、「インバウンド売上が化粧品などで軒並み苦戦している」(百貨店)といった声があがっている。特に、訪日中国人観光客に人気の関西地域では、1月の百貨店免税品売上高が前年同月比13.8%減となり、4ヵ月ぶりに前年実績を下回った。
背景には、中国で今年1月に施行された中国電子商取引法がある。同法では、電子商務を「インターネットなどの情報ネットワークを通じて商品を販売、あるいはサービスを提供する経営活動」と定義。SNSを利用して商品販売を行う事業者や、ECプラットフォーム運営事業者など電子商取引に関わる事業者に対して営業許可証の取得、納税義務などを定めている。
外国で買付した商品をSNSやCtoCのECサイトなどで転売するソーシャルバイヤー(代理購入者)も対象となっており、昨年後半から爆買いの一翼を担っていたソーシャルバイヤーの活動が鈍くなっていることが影響しているようだ。
健康食品業界でもソーシャルバイヤーによる商品の買い控えが始まっている。「昨年11月頃から訪日中国人による購買が落ち始めた」(青汁メーカー)、「むくみ対策のサプリメントの動きが鈍っている」(健食メーカー)、「在日中国人の販売員がSNSを通じて販売していた美容飲料の生産量が落ちている」(飲料受託メーカー)などの声も聞かれる。
化粧品業界でも2018年の化粧品販売金額は1兆7,255億円(前年比5.7%増)と過去最高を達成したが、12月単月では前年比0.1%減となっており、各社、新法の影響に対し注視している状況だ。一方で、新法により廉価品の横行を防げることや、商品ブランドの維持・向上などが期待できることから、市場の健全化を期待する前向きなコメントも少なくない。
本記事は「健康産業新聞 1662号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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