日本アンチドーピング機構(JADA)のサプリメント認証の終了を受けて、国内ではインフォームド・チョイス、NSF、BSCGなど海外のアンチドーピング(AD)認証取得製品が目立つようになった。JADAの新ガイドライン発表も目前とされる中で、国内も含めた各認証機関の動きに注目が集まっている。AD認証は単なるアスリート限定の指標としてだけでなく、製品の信頼性、品質を担保する客観的な指標として評価する動きも。
■JADA新ガイドライン発表間際分析機関への国際規格導入も
JADAは昨年末、サプリメントのAD認証業務を切り離す方針を表明した。もとよりJADA認証に関しては「大手広告代理店を経由して高額な協賛金を要求された」「ドーピング規程に違反した選手を処分する組織が、サプリメントの安全性を保証するのは疑問」といった事業者の声があり、その閉鎖性や不透明性が指摘されていたが、遅くとも20年中にはJADAの認証マークを付けた製品は、市場から姿を消すこととなった。
現在、JADAは、スポーツ庁や分析機関、食品メーカーからなる「サプリメント認証制度検証有識者会議」を進め、近く認証プログラムやAD認証が最低限クリアするべき基準が明確化されたガイドラインの作成を進めている。
ラグビーW杯日本大会や、来年の東京五輪・パラリンピック開催を目前に控え、事業者、アスリートからガイドラインの公開は切望されており、ある有識者会議参加者によれば「早ければ今月末、遅くとも来月中にはガイドラインが公開される見込みだ」との声も出てきている。また「AD認証機関に対しては、製造工程から成分分析まで一貫した認証体制が求められ、世界ドーピング機構(WADA)の指定分析機関が取得を要求される国際規格“ISO17025”の取得も要求される」との声も。ISO17025は、試験所認定と呼ばれ、製品検査や分析・測定などを行う試験所と、計測機器の校正業務を行う校正機関に対する要求事項が定められており、日本分析センター、インフォームド・チョイス、BSCGなどが対応している。海外認証機関の関係者は「新ガイドライン公表後、AD認証機関は国際基準に準拠した厳密なサプリメントの製造スキームの構築が求められ、アスリートの感じる不安はより軽減されるだろう」と話す。
■各AD認証機関の動きはインフォームド・チョイス取得製品100品突破
現在国内では、インフォームド・チョイス(IC)、NSF、BSCG、ドーピング・ガードといったAD認証プログラムを実施した製品、原材料が流通している。英国の分析機関LGC社が2007年に設立したICは、これまで原材料のコンタミネーションが一度も発生しておらず、欧州では高い知名度を誇る。2016年より日本国内で展開されており、現在まで31社・100以上の製品が認証されている。最終製品だけでなく原材料、製造工場まで網羅しており、原材料認証を受ける三菱ガス化学の立川智一氏は「ADへの対応はもちろんだが、原料の信頼性、品質を担保する客観的な指標として評価している」と話す。スポーツサプリメントブランド『DNS』を展開し、40品以上のIC取得製品を持つドームの青柳清二氏は「製造工程から成分分析まで一括して担保できる点はICの強みで、工場認証についてはIC取得製品の製造実績があれば容易に取得できる」と話す。LGCの日本総代理店を務めるバイオヘルスリサーチリミテッドの池田秀子氏は「一昨年から問い合わせ件数は急増しており、今夏には50社に達する見込み」とし「原材料に関しては、今年6月を目途に新たな認証プログラムが始まり、より厳密な品質、信頼性の確保につながる見込みだ」としている。米国の認証機関BSCGは、NFL、NCAA、MLBなどのスポーツ機関で採用される検査基準で、米国を中心に展開されている。国内では、ブルボンのスポーツ飲料などが認証されている。国内のAD成分分析機関では『ドーピング・ガード』事業を展開するアトラクが医薬品分析を行う国内大手分析機関での成分分析を実施。認証取得品は60を超え、サプリメーカーと連携し、スポーツチームへの啓蒙活動を積極的に展開。化粧品の成分分析にも対応する。AD認証を取得していないサプリ、原料メーカーへの取材では「自社の責任で安全性を確認し、顧客に情報開示して納得して使ってもらえるのなら、認証はいらない」、「AD認証は2020年までの一過性のブームでは」との声も聞かれ、AD認証に懐疑的な視点もあるが、その一方で認証取得メーカーでは「国際的な規格基準に基づいたAD認証を取得することで、製品の品質、信頼性が明確にアピールできる」や「2020の先を見据えスポーツ分野に限らず利用できる」という前向きな意見も多い。一部のトップアスリートのみの問題ではなく、一般人も含めたサプリメント市場に広く訴求することができるか。AD認証への期待は高まっている。
本記事は「健康産業新聞 1664号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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