健康食品や化粧品のOEMメーカーが密集していることで知られる静岡。日本のほぼ中央に位置する立地の良さから製造業としての歴史が古く、健康産業の集積地としても他県を圧倒している。総務省統計の最新の経済センサス活動調査では、栄養補助食品の出荷額で静岡が堂々の1位。前年比で10%の伸びを示しており、健康食品製造の盛況ぶりが窺える。一方で、水産物や農産物など地場産品が豊富なことも静岡の特長。近年の健康増進の機運の高まりを受け、県も地元大学と連携し、機能性食品素材の開発や、機能性表示食品制度の利用を後押しするサポート体制を整えるなど、産学官連携の取り組みを推進している。地域資源と産業基盤を活かした産業集積プロジェクト「フーズ・サイエンスヒルズ」でも多くの研究成果が生まれており、次世代産業の中核を担う健康産業を静岡から世界に発信している。
■国内サプリ出荷№1メイドイン“静岡”サプリ、世界へ発信
総務省統計局発表の最新の「経済工業統計調査品目編平成29年版」によると、平成28年における全国の栄養補助食品(錠剤、カプセル等の形状が対象)の出荷額は2,886億7,200万円で、そのうち静岡県の出荷額は544億1,400万円で堂々の全国1位。今年で9 年連続となった。前年対比でも111%と大きな伸びをみせるなど拡大基調は続いており、全国出荷額に対する静岡県の出荷額が占める割合は19%で、2位の岐阜県9 %に2 倍以上の差をつける結果に。まさにサプリメント製造の屋台骨を担っている。受託メーカーへの聞き取りでは、各社好調な様子が窺える。機能性表示食品の利用による受注増や、オリンピックを控え盛り上がるスポーツシーン向け商材の伸長、異業種の参入などによる新規案件の増加など、明るい回答が続く。一方で、今年1 月に中国で法改正された「中国EC法」により爆買いが規制され、インバウンド需要に陰りが。OEMメーカーでは「昨年末あたりから、インバウンド向け商品の注文に鈍りが出てきた」、「売れているブランドは影響ないが、注文が減っている物もある。商品が淘汰されている感じを受ける」など、今のところ大幅な影響は出ていないものの、今後はじわじわと顕在化していきそうだ。こうした状況変化に、国内メーカーでは正規の輸出や越境ECの利用にシフトをはじめている。中国消費者による“日本製健康食品、化粧品”へのニーズは依然強く、巨大な中国マーケットの開拓を推し進めている。また、美容意識の高いベトナムやインドネシア、シンガポールなど東南アジアからも“メイドインジャパン”の高品質製品のニーズは急増しており、今後も関連商品の製造需要が見込まれている。
■活発化する機能性表示食品の開発、生鮮葉物初のケールも登場
生鮮品初の機能性表示食品として有名になった「三ヶ日みかん」をはじめ、「清水のミカン」、「とぴあみかん」などの温州みかん(β-クリプトキサンチン)に次ぎ、生鮮葉物野菜としては全国初の受理となったケール(『ソフトケールGABA』)も登場。県を代表する特産品のお茶でもメチル化カテキンや茶カテキンを関与成分とした機能性表示食品が続々と登場しており、関連商品の開発が活発化している。こうした背景には、多彩な農水産物に恵まれ、健康食品・飲料産業が集積している地域優位性が挙げられる。県も地元大学と連携し、機能性食品素材の開発や、機能性表示食品制度の利用を後押しするサポート体制を整えるなど、産学官連携の取り組みを推進している点も大きい。静岡県産業振興財団のフーズ・サイエンスセンターでは、機能性表示食品制度の利用を検討している企業に対し、システマティックレビュー(SR)の実施や消費者庁への届出サポートなど一貫支援を行う。フーズ・サイエンスセンターが相談窓口となり、制度や届出に関する検討を行い、その後静岡県立大学の食品環境研究センターでSRを実施。さらに静岡県衛生課(食品表示法所管部局)がサポートし、消費者庁への届出資料に関する記載項目の確認や助言なども行っている。現在、1,900品を超える機能性表示食品が受理されているが、その内約3割の製品が県内で製造されるなど健食産業の基盤となっており、今後もこの傾向は加速しそうだ。
本記事は「健康産業新聞 1667号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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