胃腸に関わる悩みは、男女ともに多く、現代病の1つといえる。暴飲暴食、睡眠不足をはじめとした生活習慣の乱れに加え、日常生活における様々なストレスが原因だ。ストレスを受け、自律神経のバランスが崩れ生じる過敏性腸症候群(IBS)に悩む人は増加傾向にある。こうした中、胃腸トラブルにおける予防の1つとして医薬品に頼らない健康食品の利用も進んでいる。“胃の健康”分野では、胃粘膜の保護作用や、抗ピロリ菌作用などを有する素材のほか、「食後の胃の負担をやわらげる」機能性表示食品も受理されている。腸に関しては、腸内フローラという言葉は一気に浸透し、腸内環境の正常化が健康維持の鍵を握ることや、脳腸相関研究の結果から「腸は第二の脳」という認識も深まりつつある。市場では、乳酸菌をはじめとした定番素材以外にも、エビデンスデータをもとに、独自原料の提案が活発だ。
■「胃腸の調子は健康のバロメーター」
“胃腸の不調は万病の元”と言われ、重要な体内器官として知られる。胃腸がスムーズに機能しているかどうかが健康のバロメーターになっているといっても過言でない。一方で、胃腸は毎日大量の食物を消化吸収することからトラブルも少なくない。ストレスや過労が胃粘膜の急性炎症を引き起こすほか、感染性胃腸炎、過敏性腸症候(IBS)、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの原因になることもわかっている。
昨年、日本能率協会総合研究所が男女1,000人を対象に行った「胃の不調に関する実態調査」によると、過去3 ヵ月以内に何らかの胃の不調が起きた人は52.5%だった。不調の原因は、「ストレスや緊張による胃の不調」が最も多く28.8%。特に20~40代女性では約4 割に上り、他の属性に比べて高い傾向がみられた。胃を健康に保つために実施していることは「規則正しく食事をとる」(38.7%)、「暴飲・暴食を避ける」(36.5%)、「就寝前の食事は避ける」(27.9%)、
「栄養バランスの良い食事を心がける」(27.2)など食生活における予防対策が上位を占めた。
■“胃の健康”サポート素材が多数機能性表示食品も登場
胃の働きをサポートする食品素材は、伝承的に利用されてきたものが多い。霊芝、カバノアナタケといったキノコ類や、梅肉エキス、フコイダン、マヌカハニー、ヨモギなどが挙げられる。日産化学では、国内一貫製造によるロングセラーのサプリメント「日産霊芝」シリーズを展開。薬湯にして飲むという霊芝の伝統的な摂取方法に拘り、熱水抽出したエキスを最新技術により飲みやすいタブレット、顆粒などに加工にしている。機能性に関するエビデンスを武器に展開するのが三菱ケミカルフーズ。同社では、ベニノキ種子由来の油脂『ゲラニルゲラニオール』を供給。同素材に胃粘膜の保護作用があることを確認しており、サプリメント用途向けに提案を進めている。
イワキは、健胃や整腸薬の処方をヒントに7 種のハーブを独自ブレンドした『ハーブミックスIW-01』を供給。既存顧客のリピート率が高いほか、新規案件も増えているという。協和化学工業は、医薬品の制酸剤としても知られる酸化マグネシウムを供給している。高品質と安全性が評価され、国内トップシェアを誇る。同社では国内のみならず、海外市場への供給にも力を注ぐ。スノーデンは、乳酸菌『L J 88殺菌体』による抗ピロリ菌作用や胃食道逆流症の改善作用に関するエビデンスをもとに、“胃にアプローチする乳酸菌”として新市場の開拓を進める。機能性表示食品では、ヤクルト本社がB.ビフィダムY株(B.ビフィダムYIT 10347)を機能性関与成分に、「食後の胃の負担をやわらげる」という表示内容の乳製品乳酸菌飲料『BF-1(ビーエフワン)』が受理されている。
本記事は「健康産業新聞 1667号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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