メタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病やがんを含む加齢関連疾患に共通する基盤病態として知られる慢性炎症。全身のあらゆる部位や臓器で長期間にわたって“くすぶり”続け、自覚症状のないまま重篤疾患の発症や促進に影響することが近年の研究により分ってきている。疲れやすいといった日々の疲労の蓄積も慢性炎症と深い関わりがあると指摘されており、日常的な健康を維持する上でも慢性炎症の対策は重要だ。特に、食生活によって慢性炎症の発生が左右されることなどから、食品中の抗炎症作用に大きな関心が寄せられている。
■生活習慣病やがんの基盤病態”サイレントキラー”とも
生活習慣病をはじめとした慢性疾患は、世界的に急増しており、世界保健機構(WHO)では、生活習慣病やがんなどを総称して「非感染性疾患(non-communicabledisease : NCD)」と定義し、その対策について重要課題と位置付けている。
これらの慢性疾患に共通する基盤病態として注目を集めているのが慢性炎症。特に、慢性炎症に関する研究はここ十数年で急速に進み、メタボリックシンドロームや心不全、腎不全、さらにはアルツハイマーやがんなどの発症や進行・重症化に密接に関わっていることが明らかになってきた。
メタボリックシンドロームや心不全、糖尿病患者の血液中には、TNF-αなどの炎症性サイトカインが増加しており、慢性炎症がこれらの疾患の発症や進展に関わることを示しているという。慢性炎症の抑制や改善が生活習慣病対策につながる重要なキーになるとして、すでに米国市場では高い注目を集めている。慢性炎症とは、内臓などで炎症が起き、緩やかに且つ長期間にわたってくすぶり続けることを指す。
このくすぶりが白血球や各臓器の実質細胞に悪影響を及ぼし、各臓器の機能障害を招くと考えられている。たとえば肥満により脂肪組織に慢性炎症が起こると、TNF-αのような炎症性サイトカインが産生されるとともに、脂肪細胞から血液中に分泌されるアディポネクチンの量が減少し、炎症性サイトカインがさらに産生されるようになる。
細胞の肥満化により発生した慢性炎症が、各臓器へ相互に反応、連関して機能が悪くなると考えられており、メタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病、がんなどを発症、進行させるのだという。
しかし、臨床の観点では慢性炎症の診断は難しく、そのメカニズムもまだまだ曖昧な点が多い。一般的に炎症というと、外傷や感染などによって起こる急性炎症にみられる、発赤(赤くなる)、発熱(熱が出る)腫脹(腫れが出る)、疼痛(痛みが出る)という、いわゆる四徴と呼ばれる症状が特徴的だが、慢性炎症では必ずしもこれらの四徴は見られない。
炎症の発覚が遅れる傾向にあり、気付いた時には病態が進行しているケースも多い。こうしたことから慢性炎症は、“サイレントキラー”とも呼ばれている。
本記事は「健康産業新聞 1675号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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