かつては、中高年男性の悩みの種であった薄毛。現在は、若年層や女性にも波及し、頭皮への悩みを抱える人は、一昨年に比べて200万人以上増加しているという調査データも。スカルプケア製品の生産金額は急伸している。一方、ヘアケア市場は、高価格帯品の苦戦や製品単価の減少が影響し縮小傾向にあるが、ボタニカル系シャンプーの人気は根強く、植物由来素材を用いた化粧品原料の上市が進んでいる。また従来の医薬部外品、化粧品のほか、健康食品やサプリメントでのアプローチも進んでいる。
■スカルプケア急伸 中国、アジアからのニーズも拡大
厚生労働省の薬事工業生産動態調査によると、2018年度の「育毛液剤」(薬用シャンプー・リンス、育毛剤)の生産金額は、337億2,900万円(前年比125%)と前年を大きく上回っており、スカルプケア市場の急伸が伺える。薄毛は、今や高齢男性だけの悩みではない。男性型脱毛症(AGA)と同様の症状が女性に確認される「FAGA」や、過度なストレスや偏食が原因で起きる「若年性脱毛症」など性別や年齢の区別に関係なく、薄毛に悩みを抱える人は増加している。
毛髪大手のリーブ21が先月、全国の20~60代の男女2,350人を対象に実施した調査によれば、「抜け毛や薄毛、脱毛が進んでいる」と回答した人は全体の44.2%。総人口から推計される薄毛・脱毛進行中の日本人は約4,558万人となり、日本人の約3 人に1 人が「頭皮に関する悩み」を抱えているという結果に。一昨年の調査からは、200万人以上増加している状況だ。市場では、ウルトラの父のPR広告でお馴染みの『チャップアップ』が好調。
2013年の上市以降、Eコマースを中心に売上を伸ばし、今年3 月時点で総売上高は100億円前後に達したと見られる。そのほか『リアップX 5 』(大正製薬)、『イクオス』(キーリー)、『スカルプD』(アンファ―)など他の育毛、スカルプケア系シャンプーの動きも堅調で、同カテゴリーを得意とする化粧品受託メーカーの中には、今年上半期、売上高が2 桁伸長した例も。「スカルプケア系の人気は安定している」「中国、アジアなど海外企業からの受注が増加している」との声が聞かれている。
■ボタニカル人気継続細胞美容をテーマとした商品も
スカルプ市場が拡大している一方で、ヘアケア化粧品の市場は苦戦が見受けられる。経済産業省の生産動態統計によると、2018年の頭髪用化粧品の出荷金額は、約3,838億円(前年比95%)となり、3 年ぶりに拡大を見せた2018年を下回った。今年上半期(1 ~ 6 月)の出荷金額についても前年同期を下回っている。生産量、出荷数量は前年を上回っており、高価格帯化粧品の苦戦、価格競争の激化による商品単価の減少が影響したとみられる。前述のリーブ21の調査では、月にヘアケアにかける金額について75.7%が1,000円以下と回答。低価格化が進んでいることが伺える。
市場のトレンドとしては、植物由来成分を配合したボタニカル系シャンプーの人気が依然として継続。ブームの火付け役となった『BOTANIST』(I-ne)をはじめ、『ビオリス』(コーセー)、『ナチュラルリペア』(オルビス)など数多くの商品が上市されておりオリーブ、ヘンプ、ナタネ、ひまわり、アルガン、ツバキなどから抽出した植物オイルの処方が増加している。また中高年女性をターゲットにした髪のボリューム感を高めるシャンプー、トリートメント、ヘアエッセンスや手軽に髪のボリュームを出せるウィッグなども人気のようだ。
新たなトレンドしては、スキンケア分野で注目されている自己修復再生するオートファジー機能を持った素材や幹細胞を活用したヘアケア製品が登場。7 月に細胞美容ブランドを立ち上げたステラシード社が、美容感度が高く自ら美容に関する情報発信をおこなう20~40代の女性109人を対象に行なった調査によれば、「細胞美容を取り入れたヘアケア製品」に関心のある人は98%、既に使用している人は34%となった。
本記事は「健康産業新聞 1676号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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