次世代のエイジングケアを担うとして「抗糖化」という概念が登場して今年で10年。糖化対策の重要性は徐々に理解され、消費者認知調査では「糖化」の単語を聞いたことがある人の割合が50%を超える結果も出るなど、確実に身近な存在になってきつつある。今年度に入り、“糖化ストレスの軽減”を盛り込んだ初の機能性表示食品も受理され、糖化対策を取り巻く環境は引き続き大きく変化していくと予想される。糖化対策は肌への作用だけでなく、生活習慣病をはじめとした種々疾患や、認知症への影響、最近では不妊に対する影響についても明らかにされつつあり、健康寿命を考える上で重要なテーマ。健康食品業界からの関心は依然として高く、対策原料も数多く上市されている。
■“糖化ストレスの軽減による肌の潤い維持”で受理
今年5 月、日本新薬が届出した『MANGOSTIA(マンゴスティア)』(届出番号E 1 )が機能性表示として受理された。機能性関与成分は「ロダンテノンB」で、「糖化ストレスを軽減することにより肌の潤いを保持する機能があります(抜粋)」と表示した。糖化を表示内容に盛り込んだ機能性表示食品としては初となり、注目を集めた。
機能性に関する科学的根拠では、ロダンテノンBが血中の最終糖化産物AGEsの一つであるペントシジン濃度を下げるとしており、AGEsの生成抑制が肌の水分保持に寄与しているとしている。これまで抗糖化については、糖化の概念の複雑さや、糖化ストレス対策の多様化など、消費者にとってわかりづらさがあると指摘されることが少なくなかったが、今回の機能性表示の受理を機に「消費者に改めて認知、理解して頂けるのでは」と業界からも期待が寄せられている。
抗糖化マーケットについて同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センターチェア・プロフェッサー教授八木雅之氏は「糖化ストレス対策が健康美容対策の常識になりつつある。米飯よりも野菜を先に食べる食事法は2010年に論文発表された食後高血糖(グルコーススパイク)抑制方法で、ベジタブルファーストとして定着した。プレーンヨーグルトを先に食べるヨーグルトファーストなども同様の作用があり、わかりやすいキャッチフレーズは抗糖化の普及に貢献している」と指摘する(23面同氏インタビュー)。
■AGEs阻害、分解、排出など、広がる糖化対策
糖化は、タンパクと糖が結合して起きるメイラード反応を示す。糖化によって生成されるのがAGEs(Advanced GlycationEnd Products)。最終糖化生成物とも呼ばれ、AGEsは数十種類の化合物群を指す。AGEsには、蛍光性・褐色変化・タンパク同士の架橋形成などの特性があり、この特性がさまざまな病的老化を促進するといわれている。
従来の糖化対策は、AGEsの生成阻害作用や、食事中のAGEsの吸着・排出、血糖コントロールなどの切り口が主流だったが、近年新たな研究によりAGEsの分解作用にも注目が集まっている。AGEs架橋分解作用や、酸化タンパク分解酵素(OPH)の活性増強作用の重要性が指摘され、次世代の糖化対策として関心が寄せられている。
OPHは生体中組織中に広く存在しており、糖尿病ラットモデルの血清中ではOPH活性が顕著に上昇することが報告されていることから、糠化ストレスとOPH活性との強い関連が示唆されている。
OPHは、酸化・糖化ストレスにより修飾を受けた老化タンパク質の分解排泄に関与することがわかっており、基礎研究ではOPHがAGEsの一種CMLを消去することも確認されている。AGEs分解を切り口とした素材の開発は今後も進むとみられ、抗糖対策は次なるアプローチにステップアップしている。
本記事の続きは「健康産業新聞 1679号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら
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