2020年いよいよ東京五輪・パラリンピックが開幕する。消費の盛り上がりが期待されるなか、業界の関心事はスポーツサプリメントの市場拡大。関連商品は増加傾向にあるが、同時に求められるのがドーピング対策だ。ロシアの五輪出場停止に代表されるように、ドーピングは選手の一生を左右する。五輪イヤーの盛り上がりを受けつつも、健康産業界には冷静な対応と大きな責任が求められている。
世界から205の国と地域が参加する4 年に一度の一大イベントに、訪日客によるインバウンド特需や、消費の盛り上がりに大きな期待が寄せられている。健康産業界においてはやはり、スポーツシーンに向けたサプリメントやニュートリション分野への関心が高い。一足先に火が点いたプロテインは、現在ではトップアスリートから学生、主婦層、高齢者層まで、幅広く利用される身近な存在になった。産業界では第2 、第3 のプロテインを創出するべく、活発な動きがみてとれる。
一方で、スポーツシーンに向けた製品について回るのがドーピング対策。国内ではアンチドーピング認証を取得する企業も徐々に増えるなど、盛り上がりをみせつつあるが、ここに来て水を差す出来事も。
昨年、ドーム社が手掛けるサプリメントブランドDNSシリーズの『アイアンS P(アイアンスーパープレミアム)』に、世界反ドーピング機関(WADA)指定の禁止物質3 種類が検出された。同社は、プロ野球球団・読売巨人軍とオフィシャルサプライヤー契約を結んでおり、当該製品は昨年6 月の発売以降、複数の選手が摂取していたとされる。
ドームによると「禁止成分の混入量は微量で、ドーピング検査により選手から陽性反応が出る可能性は低い」とコメント。ドーピング対策の重要性を声高にしていたメーカーとしてはお粗末な事態だ。混入経緯や原因についての追加説明は未だ行われていない。
また昨年末、バイオヘルスリサーチリミテッドが、アークレイ社が開発販売する機能性原料にドーピング禁止物質が含まれていると誤って情報を公開。事実無根であることを認め謝罪をするという事態も起きた。
アークレイは発表内容を受け、バイオヘルスリサーチ社に指摘内容の真偽について照会を依頼すると、集計段階での資料混同による間違いであったことが判明し、分析の結果禁止物質はまったく検出されていないことがわかった。同内容は昨年6 月にメディア・パルより発刊された書籍「防げ!サプリメントによるドーピング!」の中にも掲載されていたという。
バイオヘルスリサーチリミテッドは英国LGC社が運営するアンチドーピング認証「インフォームドチョイス」の日本窓口業務を担っている。今回の騒動はアンチドーピング認証審査そのものに問題があった訳ではないが、ドーム社の件も含め、盛り上がりつつあるスポーツサプリ市場に水を差すことだけは避けたい。スポーツサプリに関連する全ての企業には、今後さらなる慎重さが求められる。
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