食薬区分改正から約20年。コエンザイムQ10(CoQ10)は、体感性、認知度の高さに加え、豊富なエビデンスのデータ蓄積を背景に安定した市場を形成する。CoQ10の「強い抗酸化作用」「エネルギー産生促進」という2大作用を生かし、疲労感を軽減する機能性表示食品が23品受理されている。原料は「還元型」と「酸化型」の2種類があり、独自技術で水分散性や吸収性を高めた原料も流通。サプリメント剤型のほか、飲料やゼリー、グミ、チョコなど様々な食品に利用されている。近年は、ライトユーザーを含めたスポーツサプリメントや、妊活サポート向け商品への採用が増えている。機能性表示食品では、還元型CoQ10を供給するカネカが口腔ケア(オーラルフレイル対策)などのシステマティックレビュー(SR)を揃え、新たな機能性表示に向けた準備を進めている。
■「CoQ10、老化で出現するさまざまな症状に対処できる」(山本理事長)
CoQ10は、強い抗酸化作用を有し、生命維持に必要なエネルギー産生に関わる補酵素として重要な役割を果たしている。体内のCoQ10量は、食事からの補給か体内での生合成という2 種類の供給によって維持されるが、体内での生合成能力は20歳前後をピークに低下していく。食品では青魚や豚・牛肉、ビーナッツなどに多く含まれているが、食事からだけでCoQ10を十分に補うことは難しい。日本コエンザイムQ 協会の山本順寛理事長は「サプリメントなどで補うことで、さまざまな症状に対処できる可能性がある。1 日摂取目安量は、CoQ10の体内吸収率に最大6倍もの個人差があるという報告もあり、一概に言えないが、100~300mgが一般的と考える」と話す。機能性研究では、抗疲労作用、運動機能改善作用、心機能改善作用、ドライマウス改善、美肌作用、肝機能改善作用、骨粗しょう症予防効果、認知機能改善など、多岐にわたる健康機能の研究成果が報告されている。今年2 月には、日本コエンザイムQ主催協会の第17回研究会が開催され、「加齢に伴う皮膚・運動機能低下に対するCoQ10投与の効果」などの研究成果が発表された。
■「還元型」「酸化型」原料サプライヤー各社、積極展開
市場では、「酸化型」と「還元型」の2 種類の原料が流通する。「酸化型」は、体内で還元型に変換され、各臓器に運ばれ利用される。乳化技術や包接技術を使い水溶化させることで、体内での吸収性を高めた原料などが主流。一方、「還元型」は、体内での変換の必要性がなく、そのまま体内で力を発揮するといった特長をもつ。還元型CoQ10では、世界で初めて大量生産技術を確立させたカネカ、ペトロユーロアジアの2社が原料供給を手掛ける。カネカは、「独自原料( 還元型)」「エビデンスデータの充実」「体感性」などを差別化に国内外に展開。海外では500品以上のサプリメントに採用されている。国内では、機能性表示食品の機能性関与成分としてサプリメントやグミなどに使用されており、「日常の生活で生じる一過性の身体的・精神的な疲労感を軽減する」などを表示する機能性表示食品が受理されている。また同社では、口腔ケア(オーラルフレイル対策)、睡眠、ストレスケア分野におけるSRも完備している。ペトロユーロアジアは、カネカ製の還元型CoQ10を使用し、独自のナノ化技術を駆使した「水分散型粉末」シリーズを展開。サプリメント剤型のほか、飲料、ジェル、バーなどの食品形状にも利用できる。また、新たに無味無臭、低吸湿性で飲料以外の製品に適した原料の供給も開始した。「酸化型」の原料を取り扱う事業者は、三菱ケミカルフーズ、横浜油脂工業、日清ファルマ、協和発酵バイオ、シクロケムなど。原料価格はキロ当たり5 万~ 7万円前後。三菱化学ケミカルフーズは、中国で製造する酸化型CoQ10『コエンザイムQ10-NF』を供給している。自社による品質保証が信頼され、安定した受注量を維持。新型コロナウイルスの発生による影響については十分なストックを確保しており、今のところ大きな影響は出ていないという。横浜油脂工業は、乳化分散技術を駆使して製品化した水溶性製剤『コエンザイムQ10シリーズ』を展開。用途別に4 アイテムを取り揃える。
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