経済産業省の生産動態統計によると、2019年の化粧品市場は、約1兆7,611億円(前年比104%)と過去最高を記録。昨年後半は多少息切れ感が否めなかったものの、好調をキープしてきた市場に突如、降って沸いた新型コロナウイルス問題。今回の化粧品受託企業への調査から、今年上期の業績は、昨年調査と比較して急降下が見られた。新型コロナ禍で消費者の生活環境も激変、人気受注素材・アイテムにも変化が見られた。今後のWithコロナ・Afterコロナ環境の下、生活習慣に変化の見られる消費者ニーズを注視し、迅速に順応することが求められる。ここでは、受託企業への取材・調査から得られた2020年上期の化粧品市場の最新動向をレポートする。
■ 2020年上期、「良かった」20% 前年比超は45%に留まる
中国武漢市に端を発した新型コロナウイルスの影響が、好調を続けてきた化粧品市場に急ブレーキを掛けている。
今回、本紙編集部が化粧品受託製造企業150社(有効回答76社)を対象に実施した取材およびアンケート調査の結果、2020年上期( 1 ~ 5 月)の経営状況が「良かった」との回答は20%に留まり、昨年調査より31ポイント減、「悪かった」との回答が同17ポイント増の30%となった。
実際、今年上期の業績が前年比を上回った企業は45%で、昨年調査より22ポイント減少、その内2 ケタ増を達成した企業も同12ポイント減の15%となった。一方で前年比の業績を下回った企業は同38ポイント増の45%と市場は急降下したことがわかった。
売上が前年比を上回った企業からは、1~ 3 月は順調だったが、4 ~ 5 月は新型コロナに伴う緊急事態宣言の影響で、新規の営業活動に支障を来たした分、今後の生産計画に不安を抱えているとのコメントが聞かれた。
一方、前年比を下回った企業の多くは、業績悪化の要因として新型コロナウイルスの影響を挙げており、なかでもここ数年の市場を支えていたインバウンドの壊滅、また百貨店や専門店、エステサロンやヘアサロンなど緊急事態宣言に伴う営業自粛を余儀なくされた取引先向けの受注減が響いたとのコメントが聞かれた。アイテムでは、スキンケアやヘアケアなどへの影響は軽微だった一方、在宅勤務の増加やマスク着用の影響で口紅やチークなどメイクアップ化粧品が大きな打撃を被った。
緊急事態宣言は5 月中旬以降、順次解除されたものの、外国人観光客の受け入れは当面困難な上、第2 波への警戒もある中、2020年下期( 6 ~12月)の経営状況については「良くなる」との回答は17%に留まり、増収を見込む企業も41%と半数を割り込んでいる。多くの企業からは、先行き不透明な情勢に困惑している様子がうかがえた。
業界の景気動向の指標となる設備投資にも鈍化傾向が見られる。今年上期に設備投資を実施した企業は45%と昨年調査よりも8 ポイント減少。下期に設備投資を予定している企業はさらに減って42%となっている。とはいえ、一方では今年上期に新工場を建設した企業は5 社、下期は3社が予定と回答、他の産業と比べると、化粧品市場の底堅さがうかがえる。
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