人生100年時代と言われ、健康寿命の延伸が求められる中、医療機関がサプリメントを活用する機会が増えている。消費者サイドもセルフメディケーションの推進に加え、未病に対する概念が広がり、医師や薬剤師と相談しながら安心して購入できるEBS(Evidence Based Supplement)への関心も高まっている。なかでも新型コロナウイルスの感染拡大により、ビタミンC、ビタミンDのほか、免疫サポート商材が注目に。海外需要が伸長した商品もみられた。さらに、国は地域包括ケアシステムの構築に向け、健康づくり支援を行う「健康サポート薬局」制度を推進。薬剤師のカウセンリング販売現場でもEBSの拡大が期待される。
■「免疫賦活」「栄養補給」「アイケア」など活用 コロナ影響で海外需要も
2014年に厚生労働省から医療機関におけるサプリメント等の食品の販売を明確化する事務連絡がされて以降、「患者のQOL向上」を目的に、医療機関がサプリメントを活用するケースが増えている。また、超高齢化社会に伴う国民医療費や介護費などの高騰が問題視される中、国はセルフメディケーションを推進。予防・未病領域のケアを重視し、従来の治療から治癒率やQOLの向上に努める医療機関も増加している。がんや生活習慣病領域の治療では、近代西洋医学による対症療法では不十分な面も少なくなく、栄養療法、温熱療法、運動療法など様々な組合せ治療を実践する医療機関も増加している。
TPCマーケティングリサーチの民間調査によると、医家向けサプリメント(EBS)の市場規模は年々拡大しており、2020年度は約200億円が見込みまれるという。EBSの訴求品目別では、「免疫賦活」(26.5%)が最も多く、次いで「女性特有の悩み緩和」(20.9%)、「栄養補給」(17.9%)、「目の健康維持」(15.8%)と続く。「目の健康維持」では、機能性表示食品の活用もみられる。また、「腸内環境の健康維持」(8.6%)を目的としたサプリメントの利用も進んでいる。
EBSの主な機能性素材には、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、亜鉛酵母、CoQ10、AHCC、アガリクス、霊芝、イソフラボン、米ぬかアラビノキシラン、ロー
ヤルゼリー、ルテイン、プロポリス、乳酸菌、納豆菌培養物、フランス海岸松樹皮抽出物、フコイダン、カキ抽出物、有機ゲルマニウム、冬虫夏草――など様々ある。
社会情報大学院大学の新井哲也氏がEBSの現状と課題をまとめた論文内で、医師・歯科医らを対象にアンケートを実施。サプリメントの取り扱いを始めようと考えた理由は「治療に必要だから」(36.0%)、「自身で飲んで実感がある」(34.8%)などのほか、「患者からの問合せ」が10.1%だった。EBSに期待している点は「品質の良さ(原料)」(21.2%)「エビデンスがある」(20.5%)「安全性が高い」(19.1%)が上位を占めた。
今回取材した原料サプライヤー、販売メーカーからも「エビデンスデータが増え、医療機関(医師)がサプリメントを選択しやすい環境になった」「機能性表示食品制度もあって、サプリメントに対する医師の考えが変わりつつある。“治す”から“症状緩和”“QOL向上”を目的に、サプリメントを活用する動きが広がっている」「製薬メーカーによるTVCMなどにより、安心感が高まっている」などの声が聞かれた。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、消費者のセルフメディケーション意識が一層高まる中、ビタミンC、ビタミンDや、免疫サポート素材を配合した商品の販売量が伸びたというコメントが複数あった。国内のみならず、海外需要も増加。大和薬品が展開する『バイオブラン』や、パラディアムの『インターナチュラル』などは供給量が伸長した。
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