スポーツ時における栄養補給や疲労回復などで活用されているアミノ酸。近年は高齢者のサルコペニア対策や睡眠の質改善など、幅広い機能性への注目が高まっている。サプライヤーサイドではエビデンスデータの構築や、他素材との組み合わせ提案などで差別化を図り、新たな需要創出に向けた取り組みを加速させている。新原料としては、β-アラニンが食薬区分改正で食品扱いに。米国で一大ブームを構築した原料が国内市場でどのように浸透していくのか。ドリンクの新商品が6月に発売される等、今後の消費動向に注目が集まっている。
■ コロナ禍による影響は?
スポーツ用品大手のアシックスは6 月、定期的に運動をしている人のうち、36%がコロナウイルス感染拡大前と比べて頻繁に運動しているとする調査結果を発表した。調査は4 ~ 5 月にインターネットで実施。1 週間に1 回以上運動をしている18~64歳の男女1 万4 千人を対象に行った。外出自粛で運動する機会が減少する中、意識的な運動を心がける人が増えた。
コロナ禍における店頭販売では、運動不足解消を訴求する商品の好調さが目立った。ウエルシアHDでは、「アミノバイタル」(味の素)などが伸長。マツモトキヨシでは、「HMB PERFECT85500」(Hongo)などが好調に推移した。スギHDでは、「脂肪燃焼系などダイエット関連が伸長した」という。在宅勤務などによる巣ごもり太り対策としての需要が後押ししたとみられる。
原料サプライヤーへのヒアリングでは、「シトルリンは安定的に引き合いがあった」「ロイシンを増やしたミックス品など、他の素材との組み合わせに関する問い合わせがあった」「サプリメントのみならず、一般食品やスポーツ訴求以外の引き合いがあった」といった声のほか、グルタミンのエビデンスに注目する声も。
取材先からは、「マラソンレース後に5 g のグルタミンを投与した調査では、風邪のリスクが低減した報告がある」とし、免疫力を高めるという観点で、新たな需要に期待する声もあった。グルタミンは筋肉中や血漿中で一番多いアミノ酸で、運動などのストレスにより筋中や血中の濃度が減少することが知られている。
■ 日本の高齢化率は28.1% サルコペニア対策にアミノ酸を
内閣府が公表した令和元年版「高齢社会白書」によると、日本の総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は28.1%に。2065年には、約2.6人に1 人が65歳以上、約3.9人に1 人が75歳以上の超高齢化社会になると推計している。日本の高齢化率は2 0 1 5 年に世界で最も高い高齢化率(26.6%)に達し、健康寿命延伸の観点からも介護予防は喫緊の課題に。転倒や骨折など、要介護の原因となるサルコペニア対策に照準を合わせた提案をみられはじめている。
■ 市場の起爆剤となるか「β-アラニン」食品利用が可能に
β-アラニンは( 3 - アミノプロパン酸)は、イミダゾールペプチドとして知られるカルノシンやアンセリンなど生体内に存在するペプチドの構成因子。経口摂取することで筋肉に直接作用し、疲労を遅らせ、体内のカルノシン合成を促進することが知られている。
昨年3 月の食薬区分改正で食品利用が可能に。市場では運動能力の向上機能や脳機能に対する働きが期待されており、欧米市場ではサプリメント成分に広く利用されている。査読付きジャーナルでは、短距離走、競輪、ボートレース、ウエイトリフティングなど、幅広いスポーツで筋肉中カルノシン量の継続的な増加や筋肉のバッファリング能力増加、筋肉の酸化による疲労の軽減・遅延、持久力の向上、激しい運動からの回復促進、さらには認知力や集中力などの働きが報告されている。
国内市場では6月、β-アラニンを配合の清涼飲料水が登場した。『リポビタンショットfor Sports』(大正製薬)は、カルノシンの構成成分・β-アラニンのほか、アルギニン、シトルリンを配合。運動前のショットドリンクとして訴求している。
昨年は9 種の必須アミノ酸・E A A(Essential Amino Acid)とβアラニンを配合したサプリメントも。レバレッジが展開する『EAA 9 』は、発売6 ヵ月で3 万個のセールスを達成。トレーニング指導者の山本義徳氏がYouTubeで紹介したことで話題となった。
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