2010年の食薬区分改正から10年が経過したα-GPCとHMB-Ca。いずれも機能性研究に裏付けされた確かな素材として年々評価が高まっており、流通量も順調に拡大している。特にα-GPCは運動、美容、脳機能、成長ホルモンへの作用など多様な機能性が確認されており、今後の伸び代も十分期待できる実力素材だ。米国では必須栄養素に指定されているコリンの補給元としてα-GPCの利用が定着しており、国内でもコリン摂取の重要性はますます高まると予想される。一方HMB-Caは、運動後の筋組織ダメージの軽減や、筋重量の増加、体脂肪燃焼作用などの機能性からスポーツニュートリションやロコモ・サルコペニア対策、ボディメイク素材としてすっかり認知された。機能性表示食品としても受理されている成分で、このほど「筋肉疲労軽減」をテーマにした届出が行われたとの情報も。コロナ禍で運動不足が慢性化しつつある昨今、HMB-Caの利用価値も上がりそうだ。
■ 認知機能改善で国内ニーズ高まる サプリの利用機運高まる
α-GPC(グリセリルホスホリルコリン)は、母乳や体内に含まれる栄養成分で、細胞膜の構成と補修に不可欠なコリンの補給元として知られる。コリンは生体中に存在しながらも肝臓以外の臓器ではほとんど合成できないため、食事から補給する必要がある。
米国ではコリンは水溶性ビタミンとして必須栄養素扱いとなっており、米国農務省(USDA)は摂取推奨量として、成人男性で1 日550mg、成人女子では425mgと設定。また、粉ミルクにもコリンが配合されるなど、年齢性別問わず必要な成分として広く認知が進んでいる。
コリン補給剤となるα-GPCについては、肉や大豆など一般的な食品にも含まれているものの量は微量で、食事から必要量を摂取するのが難しい。そのため米国ではコリン補給を目的にα-GPCのサプリメントによる摂取が習慣として定着している。
α-GPCに関する機能性研究では、成長ホルモン分泌作用や肝機能障害改善、血圧低下、ストレスホルモン分泌抑制作用、認知機能改善作用を有することがわかっており、健康長寿のカギを握る重要成分として年々評価が高まっている。
特に認知機能に対する有効性では、過去に日油が実施した臨床試験で、アルツハイマー型認知症患者における認知機能評価により認知機能向上作用を確認。マウス試験でも学習能力向上作用を確認するなど、脳機能サポート素材として有効な素材として国内でも広く知られている。イタリアやロシア、韓国では脳機能障害に対する医薬品として利用されるなど、その機能性は折り紙付きだ。
一方でここ数年はスポーツニュートリション用途での引き合いも出てきている。筋肉の修復亢進作用が確認されているほか、脂肪燃焼を促進するケトン体を血中に放出する作用などもわかっており、脂肪燃焼促進素材としての認知も進みつつある。リン脂質原料のトップサプライヤーは、「認知機能改善、美肌、スポーツニュートリションと幅広いテーマで着実に供給量が増加している」としている。
■ HMB-Ca、機能性表示再受理で増加 新たなクレームにも期待
必須アミノ酸ロイシンの代謝産物であるHMB(3-ヒドロキシ-3-メチルブチレート)。筋タンパクの合成促進や筋タンパクの分解抑制、筋細胞の細胞膜の安定化の機能が確認されており、米国ではいち早くスポーツニュートリション分野でサプリメント商品が流通するなど、アスリートやボディビルダーといったコア層から支持されてきた。
日本国内でも食薬区分改正以降、ごく限られた一部の利用者から支持されていたが、ボディメイクを目的としたサプリメントが大ヒットしたことで、認知度を押し上げた。また、2016年にはHMBを関与成分とした機能性表示食品として受理され「筋肉量や筋力の維持」の表示が可能になると、ロコモやサルコペニア、フレイル対策としての利用が進んだ。2018年には消費者庁からの通告による撤回騒動により水を差された格好となったが、現在では関与成分をHMB-Caに変更し、27品が受理されるなど、再び増加傾向をみせている。
先月は、“筋肉疲労軽減”をテーマとした機能性表示食品届出の動きも。既存の「筋肉の維持に働きかけ、運動との併用で筋力の維持・低下抑制」の表示に加え、「運動に伴う一過性の疲労感を軽減」が表示できるようになるといい、疲労感軽減による運動継続支援すると共に筋力維持でロコモ対策が謳えるようだ。
現在、新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務や外出自粛が続いているが、在宅時間の変化がもたらす運動不足の深刻化が指摘されている。機能性表示のバリエーションが広がることで、HMB-Caの利用価値はさらに上がりそうだ。
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