「睡眠負債」「眠活」「パワーナップ」など睡眠に関わるワードや、関連情報が増え、睡眠の重要性が広く知られるようになった。良質な睡眠確保に対するニーズが各世代で高まる中、健食業界ではサポート食品の開発が活発に。「睡眠」カテゴリーにおける機能性表示食品の受理件数は、この1 年で約1.6 倍になり、200 品目に迫る勢い。販売量が前年比2 ケタ増の商品もみられる。今年もアサヒ飲料、アサヒグループ食品、ハウスウェルネスフーズ、エスビー食品、ロッテなど各社、新商品や商品拡充を積極的に展開。寝具業界やホテル業界などとのコラボした販促活動も目立つ。また、コロナ禍でのストレスや、リモートワーク導入などによる生活リズムの変化が睡眠の質の低下を招いていることが指摘されており、自身の睡眠を見直す機会につながり、快眠サポート食品への注目が高まっている。
5 人に1人が睡眠で休養不十分 コロナ禍で、良質な睡眠確保に影響も
平成30年国民健康・栄養調査によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の成人の割合は、男性36.1%、女性39.6%。男性の30〜50代、女性の40〜60代では4割を超える。睡眠休養が十分にとれていない割合は全体の21.7%で、平成21年の調査以降、有意に増加している。
最近では、新型コロナウイルスの感染拡大により、“コロナストレス”“コロナ疲れ”に悩む人が増えているほか、リモートワークなど働き方の変化により睡眠への影響が指摘されている。
ライオンが今年6 月に20〜69歳の男女就業者2,671人を対象に実施した調査によると、新型コロナウイルスの流行前後で、「眠りの深さ」が「深くなった」は7.1%、「寝起きの熟眠感」が「良くなった」は7.9%だったのに対し、「浅くなった」は16.0%、「悪くなった」は14.1%で、一部の人に睡眠の質が低下していることが示された。
また、リモートワーク実施者のうち、「眠りの深さ」が「浅くなった」は20.6%、「寝起きの熟眠感」が「悪くなった」は17.0%で、リモートワークを実施していない人よりも上回った。
大塚製薬が9 月4 日に実施した睡眠習慣をテーマにしたオンラインセミナーに登壇した久留米大学医学部の内村直尚教授は、コロナ禍でテレワーク導入が進み、一定の睡眠時間は確保できるようになっている一方、体内リズムが乱れ、睡眠の質の低下につながる可能性があると指摘。「働き方改革は、体内リズムの改善から是非始めて欲しい」と呼びかけた。
機能性表示、製品ラッシュ続く「睡眠+ α」、ダブル・トリプル表示も
快眠サポート市場では、寝具、寝装品、アロマ、入浴剤など多彩な商材が流通。健康食品分野では、機能性表示食品が多数上市され、市場の活性化につながっている。
味の素が通販で展開する『グリナ®』(機能性関与成分:グリシン)は昨年、累計顧客数が200万人を突破した。ハウスウェルネスフーズは、「ネルノダ」シリーズ(機能性関与成分:GABA)を展開。発売から1 年経たずに累計出荷数が500万個を突破するなどヒット商品に。
アサヒグループ食品は、「ネナイト」(機能性関与成分:L−テアニン)シリーズを薬系ルートで展開。2019年の売上は前年比2 ケタ増を達成した。今年も2 ケタ増で推移しており、「コロナ禍で、普段の睡眠環境を見直すきっかけにもなった。また、“コロナ疲れ”による利用もみられる」と話す。
新商品では、エスビー食品が8 月24日に『スパイスサプリ サフラン』(機能性関与成分:サフラン由来クロシン、サフラン由来サフラナール)を上市。ECサイトでの販売に乗り出した。
現在受理されている機能性関与成分は、L−テアニン、ラフマ由来ヒペロシド、ラフマ由来イソクエルシトリン、GABAをはじめ、グリシン、オルニチン、クロセチン、ラクトフェリン、アスパラガス由来含プロリン−3−アルキルジケトピペラジン、サフラン由来クロシン、サフラン由来サフラナール、熟成ニンニクエキス、乳酸菌シロタ株、ガセリ菌CP2305株―― など、種類も多岐にわたる。
商品の増加に伴い、「睡眠、ストレス」「睡眠、整腸」「睡眠、肌」「睡眠、アイケア」「快眠、活気、疲労」など、ダブル、トリプル表示の商品も目立つ。原料サプライヤーでは、自社素材を用いた受理実績をベースに活発な提案を進めている。
クワンソウ、ネムノキ、CBD など次なる注目素材が続々
機能性表示食品の増加や、コロナの影響によりセントジョーンズワート、バレリアン、カモミール、L−セリン、タルトチェリー、ネムノキ、クワンソウ、CBD―― など、定番素材から新素材まで特色ある快眠サポート素材の注目度が上昇。
コンビは、ネムノキの樹皮から熱水抽出した粉末原料『ネムノス®』の原料を供給。森川健康堂は、「サフラン」のバルク供給のほか、自律神経の乱れを整える働きが期待できる「ローヤルゼリー」も快眠サポート素材として提案を進めている。
別名“眠り草”とも呼ばれ、沖縄に自生するクワンソウは、サプリメント、茶、飲料、ゼリー、菓子類など、様々な形態の商品が流通し、認知度も向上。機能性表示食品の組み合せ素材としての利用も増えている。
県北部でクワンソウの栽培、収穫、一次加工、販売まで一貫体制を敷く今帰仁ざまみファームでは、コロナ禍で、安眠を求めるニーズ増から新商品開発の相談が増えているという。
クワンソウ抽出エキス『ヒプノカリス®』を供給するソムノクエストは、新たな取り組みとして、“睡眠環境の問題を解決する”をコンセプトにHPの刷新を図る。クレイ沖縄は、クワンソウ生葉から独自抽出した特許成分『オキシピナタニン』を用いたヒト臨床試験を終えた。機能性表示食品の届出受理を目指す。
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