点滴療法研究会は最新のエビデンスに基づく点滴療法を行う、医師・歯科医師を会員とするグループ。高濃度ビタミンC点滴療法を中核に、この数年で会員も増加し、医療業界でも新たな注目が集まっている。今回は同会の会長の柳澤厚生氏に高濃度ビタミンC点滴療法について話を伺った。
―― 点滴療法とはどのような療法で、欧米での現況は?
柳澤 点滴療法とは、がんやパーキンソン病などの病状の回復から、予防や再発の防止、加齢や現代人の偏った食生活、ストレスなどから引き起こされる諸症状の改善や、アンチエイジングなど幅広い健康のニーズに応えられる医療行為です。欧米ではすでにエビデンスに基づく様々な点滴療法が代替統合医療・アンチエイジング医療の現場で広く行われています。特に代表的なものが高濃度ビタミンC点滴療法で、この療法は米国国立健康研究所(NIH)や国立癌研究所(NCI)が注目しており、米国カンザス大学やジェファーソン大学では卵巣がん、子宮がん、悪性リンパ腫の患者について臨床研究も進行中です。特に米国では1 万人以上の医師が高濃度ビタミンC点滴療法をがん治療に採用しています。その治療メカニズムは、ビタミンCを50~100g点滴投与することで、がん細胞の周囲に過酸化水素を生成させ、正常細胞には影響を与ないでがん細胞に核濃縮やアポトーシスを誘導させるものです。まずは週に1~ 2 回のビタミンC点滴を3ヵ月間行い、その効果を確認し、量や期間を調整していきます。
―― 研究会はどのような活動をされているのですか?
柳澤 会員が、最先端の点滴療法を提供できるよう定期的に最新の医学情報を学ぶセミナーや研究会を実施し、常に患者が安全に点滴療法を受けられるように技術向上に努めています。ビタミンCもトレースしており、信頼の置ける欧州企業のもの使用しています。10月には国際シンポジウム「高濃度ビタミンC点滴療法によるがん治療」を主催します。また、医師間のネットワークを持つので、北海道の患者さんが、九州に出張中に点滴療法が必要な場合、九州の医師に情報連絡を行い、そこで通常通りの点滴が受けられるシステムも持ちます。このほか、点滴療法のエビデンスを確立するために、会員による多施設共同研究も始まっています。
―― 日本での、患者の認知度は?
柳澤 当研究会会員クリニックを中心に、がんの標準治療との併用が可能で副作用のない治療法として広まってきました。普及の一環として当研究会では、高濃度ビタミンC点滴療法によるがん患者のQOL調査を開始します。5 月19日に点滴療法研究会の会員による初めての臨床研究、「高濃度ビタミンC点滴療法のがん患者QOL(生活の質)に関する前向き調査研究」の研究計画書が倫理委員会の審査で承認されました。現時点で点滴療法研究会の会員133施設が登録され、6 月1 日から開始されました。これだけの数の施設でQOL調査が行われるのは世界でも初めてのことです。最終的な発表は、10月に米国カンザスで開催される高濃度ビタミンCに関するシンポジウムで発表します。