健康食品市場では、高麗人参をはじめ、アメリカンジンセン（西洋人参）、田七人参、砂漠人参などの人参素材が流通している。抜群の認知度とマルチな機能性が評価され、滋養強壮・疲労回復、免疫サポート、アンチエイジング、妊活サポート、エナジードリンクなど、様々なテーマで採用が進む。原料サプライヤー各社では、「醗酵」「熟成」「膨化」といった加工や、生産地、栽培方法にこだわることで差別化を図っている。
高麗人参、コロナ禍で通販好調 吸収性向上・CK 高含有化などで差別化
「滋養強壮・疲労回復」の定番素材である高麗人参は、中高年層をターゲットにした強壮・疲労回復に加え、アンチエイジング、温活サポートといった女性向け商材や、エナジードリンク、受験サプリといった若年層向け商材が流通。ドリンク、錠剤、エキス、カプセル、茶製品などの剤型で、実店舗・無店舗問わず、定番商品としてラインナップされている。
コロナ禍では、消費者の免疫意識の高まりから売上が伸びるケースも。特に通販ルートが好調で、通販企業からは「コロナが本格化した3月以降、前年比2ケタ増を達成している」「高価格帯の商品の伸びがよくなった」との声が聞かれた。
高麗人参は朝鮮半島を原産地とし、中国東北部や、ロシア沿海州にかけて自生するウコギ科の多年草植物。主な原産国である韓国からの輸入量は2019年で760.9t（2018年比12％）増、輸入金額は34,483.4千ドル（同5 ％増）で、近年増加傾向が続いている（韓国農水産食品流通公社調べ）。
高麗人参には有効成分として、興奮作用のあるPT系サポニン（プロトパナキントリオール系サポニン）と、鎮静作用のあるPD系サポニン（プロトパナキンジオール系サポニン）がバランスよく含有されており、血流改善作用、疲労回復作用、記憶力サポート、免疫サポートなど、様々な機能性が報告されている。主要各社で独自のデータ蓄積が進んでいる。
韓国農水産物の貿易振興活動を行う韓国農水産食品流通公社では、国内で記憶力及び認知機能改善に関する臨床試験を実施。高麗人参の認知度向上や、市場拡大につなげたいとしている。
原料サプライヤー各社では、「醗酵」「熟成」「膨化」などにより、有効成分であるジンセノサイドやサポニン代謝物であるコンパウンドKの高含有化、吸収性の向上、独特の苦みの呈味改善といった提案を進めている。
栽培方法により原料の差別化を図るサプライヤーもある。ベーガン通商では水耕栽培により生産された高麗人参の取扱いを開始。希少ジンセノサイドの高含有化や、安定した栽培環境、安全性の向上が特長となっている。つくば市の所在する農業生産法人水杜の郷では国産人参素材の生産進めており、今秋は高麗人参約６tの収穫を行った。
アメリカンジンセン（西洋人参） 女性層への提案進む
アメリカンジンセンは、アメリカ北東部からカナダ南部の森林地帯に分布する人参。高麗人参と区別するために「西洋人参」とも称され、主に米国ウィスコンシン州で生産されている。
高麗人参と同じウコギ科トチバニンジン属であるが、“微温性”とされる高麗人参と種が異なり、“涼性”とされている。
特に中枢神経抑制作用が報告されているPD系のジンセノシドを多く含んでおり、中枢神経抑制作用、免疫賦活作用、血管拡張作用、運動による筋損傷抑制などの機能性が報告されているほか、更年期症状や月経前症候群の緩和にも役立つとされている。
市場では妊活サプリをはじめとした女性層向け商品や、脳機能サポートを訴求する高齢者層向け商品などで提案されている。サプリメント形態のほか、複合素材としての採用や、製パン・ゼリーなどの一般食品形態など、採用の裾野が広がっている。
田七人参・砂漠人参 一般食品への応用も
ウコギ科ニンジン属の田七人参は、標高1,200～1,800mのごく一部の過酷な環境下でしか栽培できない、希少価値の高い原料。中国では金にも代えがたいという意味で「金不換」とも称されている。
市場では、粉末、錠剤、ドリンクなどが流通。なかには漢方医専門医監修の製品開発や、WEBを活用した情報発信もされている。独自の苦みを活かし、コーヒー飲料とのコラボや、ココアやカレーなどへの応用など、一般食品への提案も活発だ。通販や訪販ルートのほか、雑貨店など新たな販路を開拓する動きもみられる。
カンカは、ハマウツボ科ニクジュヨウ属の寄生植物。中国・新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠南部に位置するホータン地区を産地とし、昼夜の寒暖差30℃以上、年間降水量35㎜の極めて過酷な自然条件のなかで生育している。
これまで血流改善、抗疲労、免疫賦活、抗酸化、美白、脳サポート、更年期の悩み改善など多岐にわたる機能性を確認しており、男性向け商材のみならず、アスリート向けサプリや、疲労回復訴求サプリなど、幅広い用途での提案が進んでいる。
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