国内健康食品の歴史で初めて「免疫機能」を表示した商品が登場する。キリングループが届け出たプラズマ乳酸菌を含む商品5アイテムが今年8月、「免疫機能の維持に役立つ」表示で受理された。
機能性関与成分はいずれも「プラズマ乳酸菌(L. lactis strain Plasma)」。受理された機能性表示は「プラズマ乳酸菌はpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立つ」としている。
これまでに実施した臨床試験結果をもとに研究レビューを行い、日本抗加齢協会の確認を経て届出された。キリングループでは、機能性表示食品制度がスタートした2015年から機能性表示取得に向けた活動を行っていたが、念願の受理となった。
プラズマ乳酸菌は、免疫調節に重要とされるpDCを活性化する作用を有しており、「pDCが適切に機能することは健常人の正常な免疫機能を維持する上で重要であると考えられる」という。キリングループでは、総合的な判断により機能性について示唆的な根拠があると判断したとしている(19面キリンインタビュー)。
2015年に開始された機能性表示食品制度は、業界の悲願ともいえる免疫表示を実現したことで第2ステージに突入した。気になるのが関連商品の発売について。キリングループは9月末に都内で記者発表を開催し、プラズマ乳酸菌の新商品をお披露目した。
調剤向けチュアブルタイプのサプリメント『キリン iMUSE professional プラズマ乳酸菌』をはじめ、ペット飲料『キリン iMUSE レモン』など計6種を今月より順次投入する。
キリンビバレッジマーケティング部主任の遠藤楓氏によると「近年横ばいだった乳酸菌飲料市場が、コロナ禍での免疫維持ニーズの高まりから今年に入り大きく伸長した」とし、今年8月単月のiMUSEブランドの飲料シリーズの売上は前年比2倍以上、1月からの累月でも前年比2倍以上と好調だという。
機能性表示食品としてリニューアルすることで遠藤氏は「飛躍的な成長を狙う」としている。昨今、感染症対策に対する消費者の意識が高まるなか、手軽に摂取できる飲料商品は、引き続き売上が増加するとみられる。
この記者発表が行われた翌週、間髪容れずに免疫表示の届出受理の発表があった。受理したのはキリングループのファンケルと小岩井乳業の2社。ファンケルはプラズマ乳酸菌を配合したサプリメント『免疫サポート』2品、小岩井乳業からは『小岩井 iMUSEドリンクヨーグルト』など2品が受理され、「免疫機能の維持」を表示する新商品は累計4社で11品に。グループ企業のそれぞれの強みを活かした商品展開で、「免疫」表示の市場形成に向け下地が整いつつある恰好だ。
また一方でキリンでは、プラズマ乳酸菌素材の外販をはじめとしたBtoB事業にも本腰を入れると発表。同ホールディングス執行役員でヘルスサイエンス事業部長の佐野環氏は「キリングループでの拡大はもちろん、パートナー企業との連携や、海外事業の注力などBtoB事業にも力をいれていく」と説明する。同事業部主幹の藤原大介氏も「免疫システムは、人種・性別問わず共通。海外での展開も期待できる」と話し、国内外での展開を視野に入れる。
すでに米国ではプラズマ乳酸菌を配合したサプリメントの販売がスタートしており、「ウェビナーによる商品発表を行ったが、想像以上の反響だった」という。「国内でも外食、中食問わず、幅広い食品への応用を目指していく」と意欲をみせており、当面はプラズマ乳酸菌が市場を席巻しそうだ。
こうなると気になるのが、プラズマ乳酸菌に続く第2の免疫対応素材。今回の受理実現の理由は“ガイドラインに準拠した届出資料であった”とされている。今後の免疫表示の受理の実現について消費者庁では「ガイドラインに沿った届出資料であることと、資料から逸脱しない表示であること」、さらに「他の事業者が同様に同じような知見が蓄積されてるかどうか。どの程度の知見があるのかという点によりけり」とコメントする。
今回、免疫表示の受理が実現したことは健康産業界に大きなインパクトを与えた。業界にとって喜ばしい出来事だが、届出に関する明確な指針が示されたわけではないのが実情。本当の意味での市場形成はプラズマ乳酸菌に次ぐ第2弾、第3弾の成分の登場であり、チャレンジ企業の動向に注目が集まる。
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