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増収36%、受託市場は善戦(特集/化粧品受託製造)

新型コロナの影響で成長に急ブレーキが掛かった2020年の化粧品市場。経済産業省の生産動態統計によると、今年1~10月時点での化粧品国内販売金額は、約1兆2,212億円(前年同月比84%)で推移、通期で前年を下回ることが予想される。今年の化粧品市場はアイテムや販売チャネルで明暗が分かれた。受託市場も厳しい状況にはあるものの、今回の取材・調査では、下期に入って新規・リニューアル案件の進展、海外輸出の復調など、市場回復の兆しが見られた。コロナ禍で変化する消費者ニーズへの迅速な対応、ヒットを予感させる素材も見られる中、2021年上期には過半数の受託企業が増収を見込んでいる。

化粧品市場、アイテムや販路で明暗

2020年の化粧品市場はコロナ禍で環境が一変。マスクの常用、在宅勤務の増加など、消費者のライフスタイル激変を受け、口紅やファンデーションなどカラーメイクの売上が激減した。

販売チャネルでも、免税店や都市型ドラッグストアなどインバウンド向けの店舗が壊滅。百貨店やエステサロンなどの対面販売チャネルでも、営業自粛期間の影響や、三密回避の意識が高まる中で苦戦した。

一方でウイルス対策として、アルコールスプレーやジェルなどの除菌・消毒系アイテム、洗顔類やハンド・ボディソープなどの洗浄系アイテム、入浴剤などがヒット。

販売チャネルでは、巣ごもり消費で通販やeコマースが伸長した。総務省統計局の家計消費状況調査では、ネット通販の化粧品支出額は昨年12月から今年10月まで11ヵ月連続で前年比を超えている。

また越境ECも好調を維持。中国アリババグループによる11月11日の「独身の日セール」では、スキンケアセットが輸入品の売れ筋5位に。アイテム・販売チャネルによって明暗が分かれた1年だった。

増収36%、16%は2ケタ増を達成

今回、本紙編集部では化粧品受託製造企業150社(有効回答76社)を対象に取材およびアンケート調査を実施した結果、2020年下期( 6 〜12月)の経営状況について「良かった」との回答は27%で、昨年調査から半減した。

逆に「悪かった」との回答は同16ポイント増の21%。「どちらとも言えない」との回答は同11ポイント増の52%となった。

「良かった」と回答した企業からは、「消毒剤の受注が多かった」「ボディソープや入浴剤の受注が伸長」「ネット通販企業からの受注が増加」などの声が聞かれた。

「悪かった」企業からは、「コロナの影響で取引先の店舗やエステ向け製品の売上減」「新規・既存取引先の売上減」などコロナによる影響を挙げる声が多かった。

「どちらとも言えない」企業からは、「取引先によって好不調の差が出ている」「下期に入り取引先からの受注が回復」「メイクの受注は減ったが、ハンドソープの受注が増加」などの声が聞かれた。

新型コロナの影響について、下期の業績に「悪影響があった」との回答は57%。「インバウンド減少」および「国内受注減少」との回答が多かった。ただ上期調査と比較すると、コロナの影響は徐々に収束に向かっていることがうかがえた。

今年下期の業績が前年比を上回った企業は36%で、昨年調査より31ポイント減、前年比を下回った企業は44%となった。ただ2ケタ増を達成した企業は同1ポイント増の16%、減収企業も同1ポイント減となり、厳しい市場環境にある中で、受託業界は善戦したと言える。

2021年上期、受託市場は回復へ

2021年上期の経営見通しについては、「良くなる」との回答が27%。「悪くなる」は大幅減の8 %に。一方、新型コロナ終息の兆しが見えない中、「どちらとも言えない」は65%となった。

新型コロナについては「特に影響はない」とする企業が4割を超えたものの、「悪影響がある」との回答も55%と過半数を維持。とはいえ、業績見通しについては53%が増収を見込んでおり、受託市場は回復に向かうものと予想される。

実際、今回の取材では、「保留や後倒しになっていた案件が、下期に入り動き始めた」「店販やエステサロンからの受注が回復してきた」「夏以降、一般貿易による輸出も回復基調にある」などの声も聞かれた。

また、健康食品と化粧品双方に使用できるナイアシンアミド(ニコチン酸アミド、NMN)やCBDの台頭で、「内外美容製品を求める健食メーカーや健食通販企業からの引き合いが増えている」との声も多く聞かれた。

世界的にSDGsへの対応が求められる中、プラ容器を使用しない頭髪用途の固形石鹸へのニーズや、男性用化粧品の受注が前年同期比で増加との回答も増えている。

メイク品では、マスクに付かない口紅やリキッドファンデーションのニーズが高まる中、受託各社では積極的に開発を進めているなど、コロナよる消費者ニーズの変化にも迅速に対応していることがうかがえた。

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