新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によってクローズアップされるようになった免疫機能。食品の摂取により免疫賦活を期待する消費者はコロナ騒動以降増えており、国内では乳酸菌やプロポリスなどの素材が注目を集めた。β-グルカンもその一つ。すでに欧米では“イミューンヘルス“と称し、免疫へ働きかけるサプリメントとして定着しており、コロナ禍で免疫サプリの売上が増加している。国内ではβーグルカンの認知度は低いものの、確かなエビデンスを武器に今後の流通拡大が期待されている。
免疫機能向上が期待できるβ-グルカン
β-グルカンの歴史は古く、1940年代に米国でパン酵母の細胞壁から抽出され世に誕生したのがはじまり。グルコース分子がグルコシド結合で重合した多糖類をグルカンと呼び、結合の仕方によってα-グルカンやβ-グルカンと分類される。酵母やカビ類に含まれるβグルカンは主鎖1に分岐3 の分子構造を持つβ1-3グルカンと呼ばれ、1-6グルコシド結合による側鎖が形成されているのが特長。
体内のマクロファージや樹状細胞をはじめとした抗原提示細胞の膜表面にはβ-グルカン受容体が存在しており、β-グルカンを摂取することで、受容体と結合し免疫賦活作用が期待できるという。β-グルカンに関する研究では、生体防御機能や腸管免疫機能に関連する有効性が数多く発表されている。
免疫作用について本格的な検証がはじまったのは1960年代で、以降β-グルカンは免疫賦活作用を有する機能性成分として本格的に知られることとなった。2000年には、β-グルカンの特異的な受容体デクチン-1が発見され、マクロファージの貪食によってデクチン-1が活性化することが明らかになった。
研究論文は英ネイチャーに掲載され世界中から関心が寄せられた。こうしたエビデンスを基に欧米ではβ-グルカンに関するヘルスクレーム化に動きが強まり、米FDAや欧州EFSAによって酵母由来β-グルカンの免疫サポート表示が認められるようになった。
そして一昨年、中国武漢で発生した新型コロナウイルスの感染が広まると、世界中で免疫向上への意識が強まり、改めてβ-グルカンの機能性に注目が集まっている。
コロナで脚光 国内市場拡大に期待高まる
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界的にサプリメントの使用が増加している。
NBJが発表した2020年の米国サプリメントビジネスレポートによると、多くのカテゴリーで売上の増加がみられたが、なかでも免疫力と全体的な健康状態に関する製品での伸びが良く、免疫に関連した製品は前年比9.3%の成長がみられるとしている。
特に米国では免疫については早くからヘルスクレームが実現しており、消費者も選択しやすい土壌が整っている。
一方国内では、大麦由来β-グルカンを機能性関与成分とした機能性表示食品が受理されているものの、表示は「腸内環境を整える」「コレステロールや血糖値の上昇を抑える」に限定。免疫表示については、酵母由来β-グルカンを関与成分とした機能性表示食品の受理が待たれる。
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