11回にわたり開かれた消費者庁の表示検討会が昨日終了した。近く論点整理が行われ消費者委員会に報告される。結論としては健康増進法の運用強化である。記者会見の質問では「保健所ごとに解釈の異なるケースの統一と誰が見てもおかしい表示の取り締まり」(相本課長)とし、行政府としての節度ある取り組みに止まりそうだ。
検討会は終始、「機能表示の導入」を求める業界委員と、「取り締まり、排除」を叫ぶ一部の消費者委員の意見が対立、「消費者の利益のためにも情報開示は不可欠」とする良識派の意見はかき消された。業界側も、機能表示の根拠となるエビデンスの提示などで、対応の遅れが目立ち、学識者との連携、企業間の連携などの未熟さなど実力不足が目立った。来月以降の取り組みとしては、トクホ制度について①試験デザインの枠組みの提示、②公表する審議内容の範囲の統一、③規格基準型トクホの新たな規格基準の策定、④許可後も企業が科学的知見を収集・報告する仕組み・・・など(詳細関連記事、健康産業速報、健康産業新聞)があげられている。
検討会を概観すれば、一部の消費者団体の健康食品排除論は、無意味でしかなかった。各消費者調査では、「国民の半数近くが利用し、少なからぬ人々が安全上の不安を抱いている」実態が明らかになっており、それをどのようにするかの検討会であるべきであった。消費者に情報提供が出来ない薬事法の乱用は、消費者の不安をかきたてている。消費者の選択の権利を守る上で、情報の開示は不可欠である。ただ、食品機能の表示や制度化は存外に難しく、その取り組みは未来への挑戦でもある。どのようにこの挑戦を進化させるかの議論は必要であるが、これを斥ける議論は、文明の進化を拒むポルポト派の主張に似ている。
今日の食生活は、少子化、高齢化の中で、かつてのような手作りの食事を囲む食卓の風景は見えてこない。その一方で、肥満や生活習慣病、あるいは熱中症のような今日的な危機も迫っており、その対策が急がれていることも事実である。今の食生活では、健康はおぼつかない。そのことを直視せずに、排除論、理想論では消費者はついてこない。沖縄問題で政権離脱をした福島党首と、これにレッドカードを突きつけた辻元氏の構図ではないが、現実問題は批判や主張だけでは進まないということを我々も肝に銘じなければならない。