先端医療をベースに現代医学と融合させる新たな統合医療が脚光を浴びている。特に高濃度ビタミンC点滴療法については、豊富なエビデンスと高い安全性を背景に、医師の採用が広がっている。こうした先端医療を切り口に、統合医療が推進されるきっかけになるかが注目される。
先月17・18日に都内で行われた「第11回国際統合医学会」で会頭として登壇した健康増進クリニック院長の水上治氏は「日本で統合医療が進まない理由は補完・代替医療のエビデンスレベルが低い、イカサマが少なくないなどの理由による。まずは患者主体の観点で、エビデンスレベルが高く、現代医学に近い先端医療の切り口から始めていくべき」と先端医療から切り開くことが統合医療推進の近道であることを話した。
実際、統合医療や補完・代替医療のカテゴリーは、健康食品などを使った食事療法をはじめ、漢方、鍼灸、マッサージ、柔道整復、カイロプラクティック、音楽療法、ハーブ・アロマなど多岐にわたるが、共通しているのが古くから体に良いとされる伝統療法がベース。厚生労働省内に今年設置された「統合医療プロジェクトチーム」で、各療法の情報収集が始まったばかりだ。
その一方で、先端医療を組み合わせた新しい代替医療法が数多く登場している。それが「高濃度ビタミンC点滴療法」や「キレーション療法」、「グルタチオン療法」、「オゾン療法」、「全身・局所温熱療法」、「放射線ホルミシス」―など。中でも医師の採用が急激に増えているのが高濃度ビタミンC点滴療法。同療法は、疾病のケースにより異なるが、がんについては、ビタミンC(50~100g)を投与することで、がん細胞の周囲に過酸化水素を生成させ、正常細胞には影響を与ないでがん細胞に核濃縮やアポトーシスを誘導させるというものだ。2005年に米国国立がんセンター(NCI)、米国食品薬品局(FDA)、国立衛生研究所(NIH)で、高濃度ビタミンCが腫瘍組織を減弱させることを、症例を交えた論文で発表したことが始まり。各国の医学誌で臨床研究成果が報告され、米国では、すでに乳がん、前立腺がん、直腸がん、肺がん、大腸がん、膀胱がん、子宮がんなど、数多くの臨床結果が報告されている。
日本では約3 年前から導入が広がり、臨床成果も多数発表され、副作用が少ないがん代替医療法として医療従事者の関心を引き、採用に拍車をかけた。先述の水上氏は、「エビデンスレベルが高く、QOLを高める先端医療は重視されるべき」とし、先端医療を前面に立たせることで、統合医療の医師を始め社会の認証を得ることが重要とする。
それでも医療関係者の中には、さらに十分な臨床データを構築し、こうした療法に対する懐疑的な見方を払拭させることが必要とする声もある。そうした中、点滴療法を行う医師・歯科医師を会員とするグループ・点滴療法研究会では、高濃度ビタミンC点滴療法によるがん患者のQOL調査を6 月より開始。現時点で点滴療法研究会の会員133施設が参加登録され、世界初の複数施設でのQOL調査として注目されている。最終的発表は、10月に米国カンザスで開催される高濃度ビタミンCに関するシンポジウムで発表され、報告に期待が集まっている。