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免疫、メンタル、タンパク質吸収促進など広がるエビデンス(特集/殺菌乳酸菌)

加工特性の良さからサプリメントのみならず一般食品や外食産業にも一気に採用が広がった殺菌乳酸菌。殺菌体の素材が広く知られるようになったことで、国内での熱狂的な乳酸菌ブームを後押しした。現在その火は海外に広がりつつある。特にここ数年のコロナ禍では免疫領域への働きが高く評価され、殺菌体に海外からも大きな関心が寄せられている。従来欧米ではプロバイオティクス(生菌)が主流だったこともあり、殺菌体市場はある種日本が独自に形成してきた特殊な市場といえる。しかし、参入企業の急激な増加や、幅広いエビデンスの進行によって、グローバル市場への新たな扉を開いた格好となった。最近ではprobiotics(プロバイオティクス)、prebiotics(プレバイオティクス)にならび、殺菌菌体や代謝物を指すpostbiotics(ポストバイオティクス)としての定義も進んでいる。

世界に広がる殺菌体 ポストバイオティクスとして認知

殺菌乳酸菌はその名の通り、培養した乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌を加熱殺菌処理によって加工した死菌体。殺菌によるメリットは乳酸菌の品質を一定にすることで原料の安定化が図れるほか、生菌と異なり気軽にあらゆる製品に配合することが可能となる点にある。

製造における制約もほとんどなく、焼き物など熱を加える工程にも強い。また、製造現場においてもコンタミリスクを減らすこともでき、その取り回しの良さから健康食品や加工食品をはじめ、中食、外食産業でも広く使われるようになった。

機能面では、培養時に菌体活性が最も活発になるタイミングで殺菌処理を行うことで、その菌株が持つ機能性を余すことなく発揮させることができるのも殺菌原料の特徴の一つ。生菌と比較し原料中の乳酸菌数を多く規格できる側面も併せ持つ。

生菌では、平均して1 mg中に数十億から100億程度の乳酸菌が存在するが、殺菌乳酸菌では、1mg中に数百億から数兆個の乳酸菌を規格することができる。

殺菌体の歴史は実は古く、乳酸菌研究の祖とされるロシアの微生物学者メチニコフの時代から、殺菌体を用いた研究は行われていたという。殺菌体の作用メカニズムについて、腸内細菌叢研究の権威でバイオジェニックスを提唱した故光岡知足氏によると「腸管を入った乳酸菌は小腸のパイエル板を通過して体内に引き込まれ、マクロファージによる貪食が起こり、IL-12やインターフェロン-αなどのサイトカインを分泌する」という。

こうしたことから、特に免疫領域への作用を持つ菌株が多い。整腸作用はもちろん、抗肥満作用や美肌(保湿)作用、口腔環境の改善、タンパク質吸収促進など、現在では幅広い成果が確認されるようになった。

殺菌体シェアは拡大傾向

乳酸菌やビフィズス菌の圧倒的な健康イメージは、あらゆる健康訴求商品の副剤として絶大な人気を誇る。なかでも殺菌体原料は、配合する食品剤型を選ばないため、出荷ベースでも2ケタ伸長を続けている。

調査会社のTPCマーケティングリサーチが昨年発表したレポートでは、2020年度の乳酸菌、ビフィズス菌、乳酸菌生産物質の出荷量は前年比5.0%増の331.5トンに拡大。内訳は生菌素材が2.0%増の203.5トン、殺菌素材については同10.3%増の110.6トンに伸長し、生菌よりも大きな伸びを示している。

殺菌素材の供給量増加についてはやはり、「加熱などの加工に対して耐性がある」「コンタミネーションリスクが低い」といった“汎用性”の高さと、「菌体の密度が生菌よりも多い」など、殺菌体特有のメリットが評価されているようだ。

また、機能性表示食品への対応が進んでいることも、シェア拡大を後押ししており…

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