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タマネギと二本の杖(連載/企業を歩き人と会う)

【俺も何度か行ったことあるけど、X社に訪問しても、広告協賛はもらえないよ】 会議で当時の編集次長に言われた。

入社2年目。タマネギ特集を企画し、取材・広告営業を進めていた。実際X社の出稿実績は皆無。

タマネギサプリメントの取材先がただただ少ないこともあり、何も考えずに訪問した。

取材に応じてくれたのは、物腰柔らかなA会長。A会長は、私から広告協賛の提案をするまでもなく言った。

『業界専門紙からタマネギ特集の提案を頂いたのは初めてだと思います。うちはパイオニアとして、1ページ買い取らせてもらいます』

私にとって、入社して初めて協賛頂いた全面広告だった。

時は2000年代初頭。機能性表示食品は存在せず、トクホ制度がスタートして間もない頃の話。『トクホの登場により、いわゆる健康食品の表示や広告規制は強まっていくだろう』とし、自ら出版社を経営していたA会長の記事チェックは厳しく、そして的確だった。

また、『タマネギはプレイヤーが少ないから、多くの協賛を集めるのは難しい。うちが国内7割のシェアをもってますから』と、関連企業やタマネギ博士と呼ばれていた大学教授を紹介して頂き、特集コンテンツまで提案してもらった。『勉強してね』と書籍を何冊も渡された。

それがA会長とのお付き合いの始まりだった。「知識、文章力、コネクション、企画力……すべてに無力な私を補ってくれた」

その後、ことあるごとに全面広告を協賛して頂き、有名和食屋で幾度もご馳走になったりした。沖縄の離島取材に招待して頂いたこともあった。その後、A会長が取材対応を引き継ぎ、現場から少し距離を置き始めた。

私もX社を引き継いだことで疎遠になっていったが、登山に勤しまれていることを人づてに聞いていた。何度か間接的にお誘いを頂いたが、参加したことはなかった。

そんなA会長の訃報を知ったのはつい先日。葬儀は…

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