政府が医療費削減の方策として、生活習慣病の早期発見を目的とした「特定健診」の施行をはじめ、予防医療や美容医療での保険外診療の一部解禁、伝統医療などと組み合わせた統合医療の推進など、サプリメントが補助治療のカテゴリーとして挙げられている中、それに先行するかのように医療向けサプリメント(EBS)の導入が加速している。
医療EBSの導入が広がっている大きな背景には、治療後の再発防止をはじめ、医薬品では改善しにくい美肌、更年期障害、疼痛や疲労、ストレスなどの補助療法への需要の高まりがある。現行医療での治療法が困難で、新たな治療法を求める患者側のニーズも高い。
そのニーズに対応すべく、メーカー各社は開業医やクリニックをコアターゲットに、がんなどの免疫や美容、メタボリックシンドローム対策商材を提案。ビタミン・ミネラル群をはじめ乳酸菌、マイタケ、ヤマブシタケなどのキノコ類、カキ肉エキス、パパイヤ発酵酵素、ヒアルロン酸、プラセンタ、米ぬか抽出物――などさまざまな素材が利用されている。そして一般に販売している自社商品の含有素材を増量した処方に組み替えて商品化しているケースが多い。
医療用EBS市場は当初、中小企業がリードしていたが、ここ数年は大手企業の参入が相次いでいる。ファンケルが2006年に、医療機関専用のサプリメントブランド『クリニケード』を上市したことを皮切りに、参天製薬ではルテイン含有の『サンテルタックス』を眼科医院やコンタクトレンズ販売施設などで展開。サンスターでは、オーラルケアブランド『G・U・M』シリーズで、カルシウムと大豆イソフラボンアグリコンを配合した特定保健用食品を販売している。ディーエイチシーでは今年から、医療機関専用サプリメント『DHC FOR MEDIC』シリーズを、わかさ生活も眼科医監修のルテイン、ゼアキサンチン含有のサプリメント『ルテインプロ』の販売を開始した。
今後の展望として、大手の参入などで、より治療補助食品として医療用EBSのマーケットは拡大するものと思われる。しかし現状は、サプリメント療法というカテゴリーは無く、あくまで食事療法の範疇というグレーゾーンであることに変わりはない。政府では現在、行政刷新会議でサプリメント療法を含めた混合診療の全面解禁の議論を重ねていると聞く。医療機関の新たなシステム構築を望む声は年々高まっている。