1月12日のNHK「ためしてガッテン」が面白かった。静岡県掛川市の「緑茶」パワーを取り上げた。人口10万人以上の市区町村でがんの死亡率が日本一低く、高齢者の医療費も全国平均で20%も低いという掛川市。その掛川市の元気の秘密が「緑茶」であるという検証報告である。これを聞くだけで、受信料を払う価値がある。
番組では、東北大学の栗山信一郎教授の研究で、「悪玉コレステロールが低下、運動や食事制限なしにメタボや動脈硬化の改善・予防に大きな効果がある」という結論が得られたというもの。病院で処方される薬並みの効果だとも。更に腸内環境についても、お茶と腸内細菌の効果に関する実験で、善玉菌が25%以上改善、便秘効果の報告もあったと、医薬品もサプリメントも顔負けの結果だ。まとめとして、がん死亡率の低い町の上位15市区のうち7つの市区(藤枝、磐田、浜松、所沢、津、鈴鹿、鹿屋)がお茶の産地であるということも紹介された。
このような健康番組に、行政は健康増進法の遵守を要請、機能表示の喧伝を自粛するように呼びかけてきた。いわく健康増進法がある、薬事法があると。法律は一体何のためにあるのか、誰のためのものか。この番組が示したものは、医療費削減や国民の健康の話であり、多くの国民がそれを知ってメリットを得られるものである。しかも、医薬品並みの効果といっても、本来的には、緑茶の機能研究などは治療の議論ではなく、予防領域の話である。
が、行政官は予防領域の話は医療の領域の話と説明する。本質的にはおかしいいが、保健衛生上のルールは世界的に保守的ではある。エビデンス議論となると、「特定成分での医薬品並みの検証」とトクホや医科向け医薬品のハードルが突きつけられ、それがなければ、価値がないような批判が一部の学者や消費者団体の関係者から寄せられる。かくして、農産物や食品、サプリメントで予防を考える消費者、健康に取り組もうとする消費者の権利は、著しく毀損されているのが現状である。食品の機能、サプリメントの機能、医薬品の機能はそれぞれに異なるはずであるし、裾野の広い予防領域で、国民的な健康の維持増進へのエビデンスのあり方でコンセンサスが得られれば、それに越したことはない。