厚生労働省が昨年2月に立ち上げた「統合医療プロジェクトチーム」発足を契機に、国の医療政策が大きく転換するか期待されが、与党の政権基盤の弱体化などにより、省内での具現化に向けた動きは足踏み状態となった。その後、昨年12月に細川律夫厚労大臣は、日本統合医療学会の渥美和彦理事長に対し、「平成23年度は統合医療プロジェクトチームを発展的に改組し、統合医療検討会を発足させるべく準備を始める」とした。今年5月には、民主党の「統合医療を普及・促進する議員連盟」が役員会で鳩山由紀夫元首相をあらためて会長に選出、統合医療の推進へ再スタートを切っている。今後の政府、議連による建設的な議論、取組が期待される。
「統合医療プロジェクトチーム」は昨年4月に第2回会合を開いて以降、議論はほとんど進展していない。民主党政権が2009年9月に誕生し、鳩山前首相が施政方針演説で「統合医療の積極的な推進を検討する」と表明したのがプロジェクト発足の発端となった。鳩山前首相は「統合医療の推進は、医療費の大幅削減につながる」との考えを示し、医学界や関連業界に大きなインパクトを与えた。混合診療全面解禁に向け、舵が切られたかに見えたが、昨年6 月の鳩山前首相の退陣とともに、「統合医療の推進」は足踏み状態となった。
「統合医療の推進」議論が足踏みする中、日本統合医療学会の渥美和彦理事長は昨年12月、細川律夫厚労大臣と面談し、統合医療の普及・啓発に向けたさらなる支援を要請した。これを受け、細川大臣は「現在進行中の特別研究(平成22年度厚労科学研究)の結果を踏まえて、きちんと対応する」と返答。その後、細川大臣は渥美理事長に対し、「平成23年度は統合医療プロジェクトチームを発展的に改組し、統合医療検討会を発足させるべく準備を始める」と連絡した。
5月11日に開催された「民主党厚生労働部門会議ヒヤリング」には渥美理事長も出席し、宮城県内に統合医療の拠点を設置し、漢方、鍼、ヨーガ、アロマテラピー、音楽療法などの専門家による統合医療を展開するなどとする提案を行った。また、鳩山由紀夫元首相が会長を務める「統合医療を普及・促進する議員連盟」は、政権交代により鳩山氏が首相に就任してからは事実上の休眠状態となっていたが、5月25日の議連役員会であらためて鳩山氏を会長に選出、再スタートを切った。副会長には平野博文前官房長官、幹事長に山根隆治参議院議員、相談役には財務副大臣の櫻井充参議院議員が就任している。
厚労省の今年度予算では、「統合医療の情報発信に向けた取り組み」に1,000万円の予算を計上。「統合医療について、国民にわかりやすく、適切な情報発信を行うため、統合医療の技術評価の手法、情報発信の対象、情報発信のあり方等について検討を行う」としている。厚労科学研究では、2007~08年度に「統合医療の安全性と有効性に関する研究」、「統合医療による国民医療費への影響の実態把握研究」、「がん治療による副作用の緩和に関する統合医療の研究」、2010年度に「統合医療を推進するための日本伝統医学の標準化」、「統合医療の情報発信等の在り方に関する調査研究」などを実施。対処療法中心の西洋医療の限界が指摘され、国民のセルフメディケーションに対する意識が高まる中、これらの研究成果を踏まえた消費者(患者)視点の建設的な議論が期待される。