6日に開かれたエグゼクティブ会議で、国立がん研究センターが8月25日に発表したリリースに大きな疑問の声が上がった。エグゼ会議では当初、同センター発表に基づき、日経夕刊紙や化学工業日報などが報じた記事が真逆の内容になっていることから、「ビタミンサプリ摂取に関するがんリスクの増減と報道のあり方」というテーマで、シンポジウムは開かれた。パネリストの指摘で、化学工業日報は「循環器系疾患でリスク低減」と報じ、日経新聞は「ビタミンサプリ摂取でがんリスク高まる」と報じた。時事通信社などもサプリメントの有用性に言及した配信を行った。
実験そのものはサプリ摂取とがんの関係がテーマで、90年代からスタートし、今回の発表は、サプリメントの摂取について、①調査開始時も5年後も非摂取、②開始時摂取、5年後非摂取、③開始時非摂取、5年後摂取、④開始時摂取、5年後も摂取の4グループで調査した。その結果、女性では①に比べ②で17%、③で24%全がんリスクが上昇したと報告、一方循環器系では、非摂取者に比べ5年の摂取者で発症リスクが40%減少したというもの。特に脳梗塞で有意にリスク低減が見られたとも。
本来の趣旨からはサプリを取っていた人と取らなかった人という意味で①と④の比較が合理的で、ここでは両者の間で、全がんで8%、循環器系で40%の発生リスク低減が見られ、これを受けて「ビタミンの摂取を続けた女性ではがんや循環器系疾患のリスクが低減した」(時事通信社)と報じた。日経夕刊紙の報道に疑問はあるが、ニュースリリースでは、そのように読める内容となっており、極めて恣意的といわざるを得ないとの指摘がパネラーからも相次いだ。
アガリクスのブック商法ががんについての社会的な責任を問われたのと同じように、今回の国立がん研究センターの研究が、膨大な国家予算を基に進められている事からすれば、その本質的な内容が曖昧であり、一般的に理解できるところのサプリを取っている人と取らない人の比較で行われるべき、まとめが、はずされていることなど、極めて奇異なまとめだといわざるを得ない。サプリメントが有用であるにもかかわらず、その事実が歪曲されるような発表であるならば科学者としての責任は重い。同センターの中立性という点からも問題は深刻で、改めて同センターの関係者の説明を求めなくてはならないというのが、共通した結論であった。