石原都知事の年頭所感を待つまでもなく、今年は変化の節目となるとの予感は国民も共有するところだ。経済成長一辺倒で進んできた日本丸の軌道修正は、皮肉にも3・11東日本大震災と福島原発がきっかけとなった。人が生きていくことの価値は?経済活動の意味は?これまで信じて疑わなかった「成長こそが全て」という考えが一変した年であった。折しも昨年は、国民総生産(GNP)に変わる指標として国民総幸福感(GNH)を掲げるブータンの国王夫妻のご成婚と訪日、被災地の訪問などもあり、若き国王夫妻に大きな共感が寄せられた。
2012年は、こうした価値観の転換、それに対して日本経済がどのように対応・進化していくのか、その結論を見出さなければならない難しい転換点でもある。国内的には東日本の復興と原発問題への対応があるが、人口減少と少子高齢化、そして社会福祉支出の増大への対応も待ったなしの課題だ。国際的には、欧州危機や米国経済の行方にも関心が高まる。また、日経MJの企業の社会貢献への調査でも4割が『社会貢献と収益の両立を目指すビジネスモデルの構築が必要』とし、9割で『企業は社会貢献すべき』と回答している。企業の責任はかつてなく大きくなっている。
一方、健康産業の分野は、団塊世代の消費市場への参入や、新年号でも紹介されたが、チェルノブイリ以降の有機農産物などのエコビジネスの台頭が欧州ではあったが、我が国でも、ロハスやエコ、マクロビオティック、有機商品のブームが、生活に密着した存在として浮上する可能性がある。大きく捉えれば、健康、美容、運動、余暇などの分野は人々が幸福の尺度とする上で、大きな受け皿になる可能性がある。
また、米国や欧州の地盤沈下、急成長する中国の新たなリスクもあるが、トルコやブラジル、インドなどの成長、インドネシア、ベトナム等の新たな新興国の台頭など、わが国の健康産業との関わりにおいても、大きな期待が広がる。2012年は、大きな追い風をどのように受け止めるか、期待と舵取りの難しさが問われている。(健康産業新聞、主張)