統合医療

厚労省「統合医療」で検討会立ち上げ

 厚生労働省医政局は先月26日、「統合医療」の今後のあり方を議論する検討会の初会合を開いた。厚生労働科学研究などで積み重ねた知見を踏まえて、「概念」「課題」「今後のあり方」を検討。医政局長による検討会との位置付けで、学識者らによる本格的な議論が始まった。


 座長を務める国立長寿医療研究センター総長・大島伸一氏は冒頭、「臨床の世界では従来の医学や科学だけでは解決できない課題がある」とした上で、「統合医療は多種多様で検討会の着地点が見えにくいが、今の日本や世界の状況を考えると、避けて通れない問題」と強調した。
 初会合で示された論点は、「統合医療」について、①どのような概念で捉えるべきか、②現時点でどの程度の科学的知見が得られていると言えるか、③安全性・有効性等についてどのように評価したらよいか、④推進していくためにどのような取り組みが必要か ―― の 4 点。
 参考人として招かれた日本統合医療学会理事長の渥美和彦氏は、今後検討すべき事項として、統合医療の診療ガイドラインや評価基準などの作成に言及。また、東亜医学協会理事長の寺澤捷年氏は、「西洋医学は要素還元主義に基づく医療体系であり、日本の漢方は構造主義的手法を保有する」とし、漢方の構造主義的視点を活用しつつ、西洋医学を取り込んだ統合医療の構築に言及した。
 日本医師会副会長の羽生田俊氏は、統合医療を否定するものではないとした上で、統合医療と冠した医療事故や副作用などの例に触れ、「安全性と有効性が確立されない限り、推進できない」とし、「効くものもあるが危険なものもある現状では、誰が誰に対しての統合医療か、国家資格者による担保なども考えるべき」と指摘した。
 国立健康・栄養研究所情報センター長の梅垣敬三氏は、「医療関係者限定とするか広げるかも重要だが、再現性があるかどうか、検証できるかも重要」との見解を述べた。慶應義塾大学医学部漢方医学センター診療部長の渡辺賢治氏は、「再現性についても、集団で捉えるか個人で捉えるかが分かれ道」と意見した。
 フリーディスカッションでは、「統合医療」の定義や内容に関する共通認識が確立していない現状を踏まえ、「漢方以外の鍼灸やアロマなどは検討会の議論に含むのか」、「医療と名の付く限り、医療従事者が患者に行うというような枠組みを決めないと収拾がつかなくなる」、「統合医療のあり方を検討していくことは、医療とは何かに繋がる」などの意見が出た。
 結びに、大島氏は、「医療業界で従来の医療モデルでは対処できない実感がある一方、国レベルで考えると、健康障害が起きた場合に、選択者の責任と言い切れない現実的な問題が出てきている」とし、改めて今後の方向性についての課題を提示した。なお、次回開催日時は未定。

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