健康博覧会と前後して開かれた米国の「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ」(NPE)の視察団が帰国した。米国のこの展示会はこの20年成長が著しい。特徴的なのは大規模な食品フェアに近いことである。流通が整備され、多くの小売店に提供する商材が、これらの展示会で紹介される。米国のNPEでは、オメガ3やプロバイオテクス、スーパーフルーツ、極めつけは「ホールフーズサプリ」ということだ。日本なら、さしづめ、にんにく、しょうがなどの健康食品ということか。
我が国では流通の整備が遅れ、サプリメントと自然食品、オーガニックが独自の道を歩んでいるために、サプリメントは医薬品を念頭に安全性や有用性の議論が殊更である。オーガニックも、70年代のアメリカでは、農地の管理は3年を基準に、オーガニック、自然農法、一般品のような区分(三色のシールで判別)で、厳格な人もそうでない人も、オーガニックに接することが出来る自由があった。
日健栄協の11品目の機能評価がまとまり、消費者庁に報告されたが、ここではヒト試験のデーターが線を引いた。ヒト試験の必要性の議論については、金澤一郎氏のインタビューに加え、高橋迪雄、そして田中平三の両氏のインタビューも本紙で紹介しているが、やはり健康食品とは何かという点をはっきりさせないと、結論はでそうにない。サプリメントは医薬品ではないのだから。その何かのヒントになるのが話題の本「大往生したけりゃ医療とかかわるな」(中村仁一著、幻冬舎)だ。
ここでは医療偏重の現代の問題を抉り出している。「病気の8割は医者にかかる必要がなく、かかったほうがいいのは1割、かかったために悪くなったのが1割」(医療専門誌・インゲルハイム編集長)の言葉を紹介し、「本人に治せないものを医者が治せるわけがない」と言い切っている。これまでも医療と健康の問題は、医療が主で健康は従とされてきた。ところが、高齢化が進み、国民全体が半病人のような状態で、一方、最高の医療が最適の医療ではないということが、医療の側からも指摘される様に変化しているが、国民の側に医療依存がたかまっているのも事実である。
あと20年、あと30年を生きる人々が国民の半数近くになり、健康で快適な生活を送りたいと思うときに、行政の采配が相変わらず20,30年前の安全議論や医薬行政第一の状況から脱却できていないことも深刻だ。このあたりの整備が進むと、健康産業は米国並みに格段の成長を遂げるのではないかと考えている。(健康産業新聞)