レスベラトロールのように長寿遺伝子がらみの話は、先が長くその評価が難しい。ただ、素材の機能研究からある程度予測はつくが、健康法となると話は難しく、読者には想像力が必要だ。昨今の「若返りの本」シリーズのなかで注目を集めているのが「50歳を超えても30代に見える生き方」(南雲吉則著)。アンチエイジングに関心が高い女性の支持は絶大で、この話は巷で持ちきりである。還暦間近い著者が、風貌から30代に見える謎は、一日一食などの少食にあるという。風貌だけでなく、骨年齢や脳年齢も血管年齢も20~30代となると、落ち着けないのも分からないではないが、実践にはかなりの決意が必要で、なかなかに難しいのだが。
この話の真意を大手食品メーカーの役員に伺ったら、一笑に付された。「小太りは長生きという疫学調査を知っているか」と。確かにその話は聞いている。しかし、有名な猿の実験で、「腹八分の猿と飽食猿の比較では、前者が毛も肌もつやつやで、後者は毛も抜けしわもより、精彩を欠くという話もあるが、これはどうなのか」と聞くと、「あれは無菌室の話。食べすぎがからだによくないのは周知の事実だが、さりとて人間社会は無菌室でないので感染病などにさらされて生きていくには、それなりの抵抗力がないと生き残れない」と。まったくそのとおりである。
栄養や健康に関する情報の理解が難しいのはこのあたりである。かつて、「買ってはいけない」の延長線上で、コンビニ弁当を有効利用するために、養豚場で餌として与えたところ奇形や死産の豚が続出し、「添加物はこんなに恐ろしい」というキャンペーンが行われた。話は説得力があったが、これも食品メーカーに聞くと、「コンビニ弁当は、成長期の豚の(総合栄養食)飼料ではないので、そうした栄養成分を強化していない」と説明を受け、なるほどと。
健康情報は実に難しく、怖いもの見たさのような側面でものが動くことがある。しかも多くの話が、未来の話となるので、その時にどうするかということもある。摂っておけばよかったという話と、実践しなければよかったという話がある。先の話で腹八分がいいことは、皆が認めるところではあるのだが、一日一食は極論かもしれない。