統合医療

【インタビュー】 仁田新一氏 「被災地に統合医療センターを」

 厚労省「統合医療のあり方に関する検討会」設置など、統合医療推進に向けた本格的な活動が始まる中、4月に(社)日本統合医療学会理事長に就任された仁田新一氏にお話を伺った。


――今回の理事長交代の背景について
 今後、国内の統合医療の発展には、学術だけでなく、多様かつ有効な施策が必要。学会活動と社会活動とを連携しつつ展開すべく、前理事長の渥美先生は名誉理事長に、前副理事長の私が理事長に就任し、それぞれが社会活動と学術組織の運営を担う新体制を発足した。
――人工心臓に関するエキスパートとして西洋医学の立場にいらした先生が統合医療に携わったきっかけは?
 1980年頃に、渥美先生とともに、人工心臓の研究に携わる中、東洋医学にある脈診、気功などを科学的に実証研究したのが最初。脈診の情報には、心臓の活動、血液の性状、血管の性状などがあるが、東洋医学では経験的にこれらの情報を把握していた。人工心臓によるポンプの制御、人工血管の物性、血液の濃さ、流れなどのパラメータを人為的に代えることによって科学的に評価できることが分かった。脈診だけでなく、鍼灸や漢方、アロマなども同様の考え方で評価できる。
――医療業界における統合医療の見解について
 一部の極端な事例で統合医療全体を否定する方もいるが、西洋医学と融合し、活用することで、その長所が発揮されるだけでなく、相乗効果が期待できることを認識して欲しい。例えば、がんの三大療法(外科療法、化学的療法、放射線療法)の副作用である嘔吐や吐気による栄養障害などは、漢方や鍼灸を活用することで軽減した事例が多く報告されている。
 また、震災後の医療人材不足の折、体だけでなく心のケアを含む心身両面のバランスをとる新しい方向が重要視されたが、アロマなど自然療法や漢方、アーユルヴェーダなどの伝統医学は既に歴史的に長期間に渡ってスクリーニングされており、科学的な根拠付けと臨床的実証を経て医療類似行為者として西洋医学とともに活躍できるようしたいと考えている。そうした人材、方法論、医用材料のインテグレーションが、日本の医療の現状打開に重要になってくる。
――今後の抱負について
 私の役割は、近代西洋医学という科学的な検証を経た治療法に慣れている国民に対し、説得性のある統合医療を提供したい。統合医療におけるいわゆる玉石混交と言われる石の中には、磨けば玉になる石も含まれている。統合医療の科学的な根拠付けや仕組み、研究の場が生まれることで、新たな医学が生まれるものと信じている。すでに中国や韓国、インドでは、伝統医学の素材と方法論をセットで海外に輸出する取り組みが進められている。
 被災地・仙台の地で今、自治体を経由し、震災復興の目玉として統合医療を軸とした復興構想がある。新たなビジネスの場として、ハーブ(植物)や食品の栽培、豚・牛・魚、植物性などの飼育に加え、バーチャルホスピタルなど次世代の遠隔医療や、安全性と有効性を担保したチーム医療の推進も視野に入れ、近代西洋医学の最先端に加え、統合医療の人材・方法論、素材の開発・検証までを手掛ける「統合医療研究センター(仮称)」を被災地に創出したい。最終的には国内における統合医療のFDA的な役割も担う施設を作りたいと考えている。

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