都の講習会で飛び出した薬事法の68条をご存知だろうか。薬事法の8章の「医薬品などの広告」に含まれるもので、66条が、医薬品や部外品、化粧品などの効能効果などについて、虚偽誇大な広告を禁じている。また、67条で特定疾病用の医薬品の広告の制限を規定、そして68条で承認前の医薬品の広告の禁止を謳っている。要は、医薬品の場合、承認されても広告は決められた範囲であり、まだ承認されていない医薬品では逸脱は論外であるということである。それはよくわかる話だが、その68条と健康食品の関係となると、東京都が説明したようなことで、「はい分かりました」とは言えないのではないか。
かつて、厚労省は薬事法の2条の医薬品の定義をもとに、健康食品の薬事法違反の摘発を行ってきた。ここでいう定義は「身体の機能、構造に影響を及ぼすもの」で、では、機能性食品には?、普通の食品には?という議論で、機能があることは明白であることから、いつか、2条を引っ込めた。言葉狩りとし大問題になった大川専門官の4・13事務連絡の前から、68条が登場、健康食品の規制の根拠と説明されている。東京都も説明会で「効果をいえば68条に抵触する」と解説したが、奇異に感じた人が多かったのではないか。薬事法は本来、医薬品の法律で、未承認医薬品までは言及しているが、そもそも法律の制定時に健康食品はなかった。のちの解釈で、健康食品の効能効果表示に言及するが、常識的には「これは食品であり、医薬品ではない」と表示した時に、逆説的に「効能を言えば健康食品でも未承認医薬品だ」とするのは成り立たないであろう。
ネット販売など販売チャネルが広がり、アフィリエイターなどの登場で、法律の規制が届かなくなる無法状態が広がる懸念はあるが、同時に薬事法も、医薬品の法律として60年も前に作られた法律である。改正もせずに、薬事法の解釈を国民の合意もなく拡大し規制をというのは安直すぎる。国民の6割が健康食品を利用する時代だ。国民の生活が第一の時代?に即した新ルールを産業界と共に考え、サプリ利用者の利便性と安全確保に努めるべきではないか。産業界は健全な市場形成には賛成だが、法律の勝手な解釈と一方的な運用には合意できないだろう。