「医薬品のネット販売規制の省令は無効」とする原告勝訴の最高裁判決が11日に出た。原告のケンコーコムなどはもとより、通信販売に頼っていた生薬系の直販メーカーでは、死活問題であっただけにホッとしているところであろう。勝訴したケンコーコムは即日、第一類、第二類医薬品の販売を再開すると発表した。判決の出る前から同社の株価は急騰し、株式市場は判決を歓迎するメッセージを出していた。
そもそも、行政の省令や通知通達の違法性は昔から指摘されていたが、法的には経済的被害でもあればともかく、内部文書の扱いで訴訟の俎上に上らないケースがほとんどであった。監督官庁としての判断や、医師会や薬剤師会との連携で、時に理不尽で非合理と見られるようなものでも、まかり通っているケースが少なくない。皮肉にもケンコーコムなどの訴訟が進むなかで、厚労省と薬剤師会が推進した登録販売者制度では、あちこちで不正が摘発され、その杜撰な医薬品販売制度の一面が露呈している。国の敗訴の衝撃は、また健康食品規制にも影響するとみられる。薬事法では2条の適用が不合理となると、68条の医薬品の広告宣伝で規制するという不可思議がまかり通っている。
歴史的には薬事法が施行された時に、偽薬はあったものの健康食品はなかったため、泥縄式に健康食品は一旦偽薬として同法適用資格を満たすようにした上で、これを断罪するという手法だ。健康食品=偽薬とは誰が見ても苦しい。サプリメント法の必要性はここにもあるが。
そもそも、今回の民事裁判では、広く流通する通信販売という手法で、医薬品の適正販売をどのように位置付けるかということが本質議論であり、流通手段の閉鎖という規制は法の拡大解釈や通知通達ではあり得ない暴挙である。いずれにしても、これまでのような薬剤師会や医師会などとの権益レベルの馴れ合いは、消費者の利益に反するとすれば行政の根幹を揺るがす問題になる可能性もあり、今後、安易な通知通達を出させないためにも意味のある判決であった。かつての大川事務連絡も、裁判をしていれば面白い展開になったかもしれない。