総務省の家計調査の2012年分がまとまり、サプリメント支出の概要(本紙2月13日発行号)が明らかになった。これによるとサプリメント支出は、東日本大震災の落ち込みを取り戻し、過去最高になった。一世帯当たりの平均的な支出は、年間で1万4,447円。前年比で4%の伸びとなり、これまでの落ち込みを完全に埋めた格好だ。調査対象は、錠剤、カプセル、粉末、エキスなど医薬品形状のものに規定しているが、当初よりも枠組みは広がっている。但し、ゼリーや菓子などの食品形態は除外されている。因みに総世帯数は5,000万強と見られる。
もう一つが、世帯主の年齢階級別健食支出である。ここでは40歳未満では一世帯あたりの年間支出は5,000円未満だが、40代では1万円に迫り、50代では1万5,000円を突破、70代では2万円を突破する。年齢が上がるごとに支出が増大し、健食支出は50代以上で総支出の75%を占めるという特異的な市場が浮かび上がってくる。
地域別の特徴も看過出来ない。サプリ支出が1万6,000円を超す県は、北海道と九州で、中国は1万8,000円と飛び抜けている。一方、東海、四国、関東は平均を下回る。県別のバラツキは、地域の食生活や疾病状況などの要因、医療機関の状況なども考えられるが、さらに専門的な分析が必要だ。ただ、全体としては高齢者人口の増加による健康の維持・増進、予防への関心の高まりがある。多くの中高年層が、親の介護や自身の生活習慣病のリスクに直面しており、「自分の健康は自分で」という思いがある。
団塊世代が直面する定年制では、20年から30年を年金だけで生き延びなければならない、病気にもなれない現実もある。メタボリックシンドロームをくぐり抜けても、ロコモティブシンドロームが待ち受けている。
各種の調査では「消費者の6割がサプリメントを利用する」としているが、団塊世代ではこの割合も跳ね上がっているのであろう。すでにサプリメントは生活必需品だと、本紙では主張しているが、団塊世代における必要性は特異的に高い。
厚労省の統合医療の検討会がアリバイ的な議論でお茶を濁して閉会したが、今度は安倍内閣の規制改革会議の目玉として混合診療が候補に浮上した。政府は課題を認識しているが、生活者の声を反映しなければ、先の医薬品の通信販売の議論に似て意味がない。医師会や厚生官僚の声ではなく、高齢化問題、健康問題に直面する生活者の声に今こそ耳を傾ける必要がある。