健康分野の記事でも統計学的な知識が必要で、ダイヤモンドの特集「統計学」を眺めてみた。このところ女性誌では脳のアンチエイジングなどの特集もあり、雑誌やTVなど健康産業に関係する記事が溢れている。統計学は、国民健康・栄養調査などを読み解く上でも、ヒト試験の理解にも不可欠だ。国民健康・栄養調査の栄養摂取の状況をまとめるのに、厚労省が相加平均で対応していた時期があった。当時、足して2で割るのではなくばらつきが判る標準偏差で示すべきだろうとキャンペーンを張ったが、いつの間にか平均値データはなくなった。平均値、中央値、最頻値、どの数値を取るかで話は変わる。東京都はサプリメントの買取り調査で、「薬事法違反が6割」などとやっていた。最初から怪しいものを買取り、調査するという統計以前の話だが、調査そのものが「怪しい」ことが判明し表現は是正された。
特集では「ランダムサンプリングでサンプル数を増やすよりも、専門の分析官を増やした方が良い場合も」の指摘もあり、ヒト試験などのデータ分析でも不可欠である。なかでも「統計学」で興味津々だったのが「控除率」(いわゆるテラ銭)。宝くじが53%で、1,000万円当たるには交通事故死の確率の360倍の確率だから、ほぼ当たらない。宣伝がうまいから当たるように見えるが、健康増進法的にいえば「買わなきゃ当たらない」は合法か?カジノではルーレットの控除率が5%、パチンコが3%という具合で、逆に公営ギャンブルは競馬で25%、サッカーくじ50%などである。国が絡む賭け事は、サラ金も驚くぼったくりだ。
触れておきたいのは「著しく虚偽誇大な」表現についての健康増進法の話である。国家的詐欺の公営ギャンブルに、特集では「カジノ導入の反対論として、ギャンブル性の高さ、依存症などの社会への悪影響を指摘するが──」それはおかしいと。こんな虚偽がまかり通る社会で、著しく虚偽誇大を取り締まる健康増進法は、オレオレ詐欺のインキュベーションの役割しか果たしていないのではと思うほどだ。法律がすべてをカバーしていないにしても、社会常識を逸脱して道徳的になれという法律の合理性はどこにあるのだろうか。さもなくば、健康増進法で宝くじを規制し、範を垂れて欲しい。