メディケアフーズ

潜在需要2.5兆円 「介護食品」に商機

 現在の健康食品市場を上回る2兆円以上の潜在需要があることが明らかになった「介護食品」市場。
 高齢化の進展で目をつけやすいこの市場の規模が1,000億円にとどまるのはなぜか?
 背景には消費者のニーズを完全に拾い切れていない実態があった。


農林水産省は先月27日に「これからの介護食品をめぐる論点整理の会」の初会合を開催、介護食品市場の現状が報告された。
 そこで明らかになったのは、まず「介護食品」の定義が確立されていないこと、意外にも産業ベースでの歴史が浅いこと、そして2.5兆円の潜在市場をもちながら実際の市場規模は1,000億円にとどまることなどだ。
 2.5兆円の算出根拠は、506万人の要介護者数。
 介護保険制度上の基準に基づき単純計算( 1 日の食費1,380円×365日)するとこの数値になる。
 
 介護食品を求める消費者の声は切実だ。
 自宅介護の場合、3 食すべて介護食品をつくることが負担で、「市販の介護食品はとても助かる」との声が聞かれる。
 しかし、1,000億円市場のうち8 割は介護施設などの業務用で、市販向けはほとんどが通信販売。
 店頭での販売は少なく、「欲しいのに、どこで買えばいいのかわからない」というミスマッチが生じている。
 農水省の会合では、「ニーズが把握できれば取り組みたい」という事業者が多いことが報告された。
 消費者とメーカーの双方がラブコールを送っていながら、すれ違いが生じている実態が浮かび上がる。
 もちろんパイオニア企業を含めて、すでにこの市場に着目した動きを見せるメーカーは多い。
 介護食品は咀嚼・嚥下力に配慮したものだけではなく、栄養補助の観点をもつ商品も開発されている。
 在宅介護を受ける高齢者の6 割以上が低栄養傾向にあるとのデータもあり、栄養補助のニーズは高い。
 栄養補助をさらに一歩推し進めて、便秘に悩む人向けの整腸機能や、脳機能サポート、抗ロコモ機能の付与となれば、健康食品業界の出番だ。
 ここにビジネスチャンスを見出す健康食品企業もすでに存在し、濃厚流動食などで免疫系素材の採用を狙うサプライヤーもある。
 今後、「機能性介護食品」といったカテゴリーが支持を得る可能性も十分にある。
 先月開催された国内唯一の介護食・治療食の展示会「メディケアフーズ展」では、2 日間で1 万2,000人が来場、NHKなど主要テレビで取り上げられるなど高い関心を集めた。
 介護食品分野でビジネスモデルを確立すれば、輸出産業としての期待もかかる。
 宙に浮いた形の2 兆円以上の潜在需要。果たしてつかむのはどこか。

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