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食品機能は体内機能で

 文藝春秋SUPECIAL夏号で、東大名誉教授の細谷憲政氏が栄養について解説されている。読者層を考えてか、いつもの高尚なタッチとは異なり、不良老人(暴走ではない)の健康談義のようで楽しく読める。「野菜中心ではダメだ」など、栄養学者が目を剥くような話で、「水は皮膚にも良く大切だが、水道水は美味しくない。60年もコーラやスポーツ飲料を飲んできた。今も一日一本のサイダーは欠かさない」「肉が好きで、150gのステーキもレアで食べている」云々。豪胆で健啖家であることは、関係者の知るところ。「ボケずに70歳代を生き抜ければ、その人の食生活は“良”、ボケずに80歳代を生き抜ければ“優”だ。食べ方次第で、身体と精神の年齢は10歳は違ってくる」とは、体験的で示唆に富む格言のようだ(面白いが詳細は、書店で)。
 しかし、同氏が産業人や行政官に言いたかったのは、前段である。曰く、栄養失調時代は、栄養不足が引き起こす病気に基づく食物栄養学であったが、栄養過多で病気になる現代は、摂取した栄養素の器官への作用、生活習慣病と結びつくかの人間栄養学に切り替わっていると。ところが、わが国の栄養学では栄養充足率といった古典的な言葉が飛び交い、TVの料理番組は得意げにカロリー表示をし、国民は、自分の体の変化も食生活もかえりみずに、サプリメントの機能にひたすら頼ろうとしている。そして栄養素と体の内側で起こるであろう作用を、ストレートに結びつけようとしている。これは栄養欠乏時代の考えと変わらないと。


 そして、添えられた手紙には、「健康産業新聞を見ると今にも機能表示が実現しそうだが、騙されていませんか?」と。FAOの食品成分値など国際基準を受け入れずに、日本の食品成分表にしがみついている栄養学が政策の底流にあるからだ。(食物栄養学の)栄養不足の時代の基準で、(人間栄養学に基づく)機能表示の装いとは、いかないのでは。確かに、機能表示議論も成長戦略までは見えても、その先の具体化のプロセスでは官僚の手でボツにという危惧は残る。むしろ、同氏が言われる“70歳代の良と80歳代の優”こそは、麻生副総理の健康手当のヒントになりそうだ。産業界も健康政策は短い矢と長い矢の二本の矢を期待しているのだが…。

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