東日本大震災から2年半が過ぎ、平常時の食の備蓄や、流通などライフラインのあり方、その代替システムなど、当初活発に議論された諸問題は山積されたまま放置されている。
こうした実態に警鐘を鳴らすべく、9月1日、日本災害食学会が発足。
特に日常社会においても特定の食事を必要とする高齢者や乳幼児、障害者や疾病患者などの食を検討するに当たり、医療関係者や栄養士の協力も不可欠という。
発起人は、新潟大学地域連携フードサイエンスセンター長で新潟大学農学部教授の門脇基二氏をはじめ、同センター事務局長で新潟大学農学部准教授の藤村忍氏、文部科学省科学技術政策研究所特別研究員の中沢孝氏、ホリカフーズ㈱取締役執行役員経営戦略室長で新潟大学大学院客員教授の別府茂氏、一般財団法人都市防災研究所・上席研究員の守茂昭氏、NPO法人高度情報通信都市・計画シンクタンク会議理事で非常食研究会代表の守真弓氏、甲南女子大学名誉教授の奥田和子氏ら7 人。
会長の門脇氏は、学会設立の背景について、「新潟は中越沖地震など災難が多く、食産業が活発なこともあり、災害食を考える上で2 つのテーマがマッチした」と強調。
「忘れ去られて議論されていない重要な問題について、学会という形で課題解決のための情報と知識の集積を開始する。ジェネラルな学会が多い中、テーマが明確で、一方で非常に難しい問題もある。あらゆる人々を集めて課題対応を議論したい」と語った。
学会顧問に就任した奥田氏は、自身が阪神淡路大震災を経験し、さまざまな関連著書を執筆した経緯を背景に、時間が経つと忘れ去られる点を危惧。
また、藤村氏は、震災後2 年半が経過した今のタイミングで学会発足に至った経緯について、「震災直後と異なり、災害をあまり考えたくないという心理、軽んじられる傾向も。だが、新潟の中越沖地震では、地元1,000社以上の食品メーカーが被災して今日に至っており、災害時の記憶が新しい時に課題解決の場をと考えた」という。
災害食には、栄養士と食品事業者の協力が不可欠だが、その点について、守茂昭氏は、「災害食は需給が複雑だが、当学会は、学者、メーカー、配膳などの提供者、そして消費者が集うので、作り手と食べる側の相互に歩み寄る場として課題解決が期待できる」という。
会員は、正会員100人、学生会員20人、法人会員15社を目指す。8 月31日現在、すでに正会員80人以上、法人会員17社となっている。
構成は、大学関係の研究者をはじめ、栄養士、保健所・福祉法人、医療関係者、食料提供事業者など。
第1 回研究発表会は12月14日を予定。