以前、本紙内で必読の一冊として黒川伊保子さんの「きれる女と懲りない男」を紹介したことがあるが、ひょんなことで同氏の講演を拝聴できた。友人の杉田さん(美多加堂社長)に、この本を紹介したら、「講演会をやるよ」と連絡が入り、とんで行った。
黒川さんは人工知能の専門家で、ロボットの研究で、男女の脳の違いに気付き、それを体系的にまとめられ、それが前述の本になった。なるほど、なるほどと、私もそんな感じがしていて、“異性は異民族”という説を昔から唱えていただけに、やはり私説も立証されたと思うほどに。
それにもまして、男女の行動の違いと脳の仕組みを把握できていれば、これは企業にとっては製品開発のヒントになるし、また、チームや上下関係での軋轢も減らすことができ、経済性は高まる。家庭では、夫婦や子育てにも役立ち、独身者は異性を見る視点が変わり、幸せがつかめるかもしれないと思っていたら、なんと、企業からもネーミングや商品開発の相談が相次いでいるようだ。
今回も復習としては、つぶやく女の話、一つの言葉で和んだり、切れたりする話など盛りだくさんではあったが、その際に新しい話も飛び出して、いつ本になるのか楽しみなのが、年代別脳機能の解説だ。とりわけ定年間近かの人が聞いておくといいのが、60代の絶好調な脳の話だ。そもそも20代は記憶脳で、どんどん覚えるのには優れた威力を発するが、体験が少ないだけに、判断力はかける。30代、40代と、記憶脳の機能は衰えるが、判断脳の威力は磨かれ、60代、70代は絶好調というわけだ。「吾十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知り、六十にして耳順い、七十にして心の欲するところにしたがいて、矩をこえず」(孔子)の教えの通りだと。60代の脳は成熟脳で、70代は絶好調だと。大和証券はNISA導入をにらみ、70歳に定年延長したというニュースが出ていたが、絶好調の判断脳を格安で活用できるなんて、安部政権の日本再生プランのベースはできたような話である。
その夜の企業との情報交換会では若いスタッフを捕まえ、いろいろと指南をして、本人からも本を読みますのメールが届いていた。お払い箱ではないというサイエンス情報は、シニアの講演会にも有益かもしれないと考えている。