ダイエット市場はダイエット食品、トクホ、美容器具、ジムなど幅広い分野に拡大し、市場規模も1兆円に迫るというような調査データもでているが、構成企業がそれを実感できる状況にはない。かつては、○○ダイエットなるものが入れ替わり立ち替わり登場し、追随する企業も多数あり、数年はブームが続いた。今もその時のブームの夢を追う企業もあるが、「ダイエット市場は予想以上に多様なニーズと幅広い年代層に広がり、昔のように大掴みでは捉えにくくなった」と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの高橋千枝子さんは月刊ダイエット&ビューティの取材に答えている。
そうしたダイエットを、拒食症や過食症に取り組んでいる精神科医の水島広子さんは別の角度で捉えている。「ダイエットに成功があるとするなら、それは痩せた体を手に入れるという結果に執着するのではなく、体が気持ち良いと感じるライフスタイルを手に入れることではないか」(月刊ダイエット&ビューティ)と。なるほど、多くの女性がそのような感覚でダイエット関連商品に手を伸ばしているとすると、変遷する商品に懲りずに興味を寄せる女性ニーズが理解できる。前提として「世界一の肥満大国であるアメリカは、10キロ以上の減量が必要なケースが多く、カウンセリングサービスが発達したが、日本はOECD34カ国で、最も痩せ型体型が多く、日本のダイエットビジネスを支えているのはそこまで切迫していない3 ~ 5 キロの増量と減量を繰り返している人が多い(前出、高橋千枝子さん)の指摘もあり、一方、水島さんは、米国では痩せすぎモデルを規制しようという運動が広がり、大人の女性が「痩せたい」などと安易にいうと摂食障害を引き起こすなどの理由で、教養のない人と見られる向きもあるなど、これまでのような一方向のダイエットブームにはブレーキがかかっていると指摘する。
米国生まれのダイエットブームから、そろそろ解放されて、独自のマーケット戦略が必要だというのが両氏の指摘でもある。
確かに、ダイエットブームが上陸した頃、都内のジムに通うのは20代のスタイルのいい女性と決まっていたが、先ごろの体育の日の調査では、60代、70代の実に4割がジムに通っているという結果が明らかになった。中高年のメタボ対策や、美容や痩身に関心の高い50代以降の女性の参戦もあり、痩せるだけのダイエットでは通用しない時代のようだ。